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2026年9月6日日曜日

 『資本論』再学習 第81回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第7篇「資本の蓄積過程」 第23章「資本主義的蓄積の一般法則」 第5節資本主義的蓄積の一般法則の例解bイギリスの工業労働者階級の低賃金層

 

📘『資本論』再学習 第81回

第1巻 第1冊「資本の生産過程」

第7篇「資本の蓄積過程」

第23章「資本主義的蓄積の一般法則」

第5節「資本主義的蓄積の一般法則の例証」

b イギリスの工業労働者階級の低賃金層


1.今回のテーマ

第5節では、マルクスがイギリスの実例を使って、資本主義的蓄積の一般法則を具体的に示します。

その中心となるのが、工業が発展した19世紀イギリスで、多くの労働者が低賃金・長時間労働・

不安定な生活を強いられていた事実です。

イギリスは当時、世界有数の工業国でした。

しかし、国全体の生産力や富が増えても、すべての労働者が豊かになったわけではありません。

むしろ、資本の蓄積が進む一方で、低賃金労働者の層も拡大していました。


2.「低賃金層」とは何か

ここでいう低賃金層とは、単に給料が少ない労働者だけではありません。

次のような人々を含んでいます。

  • 賃金が極端に低い労働者

  • 仕事があったりなかったりする労働者

  • 季節的にしか働けない労働者

  • 家内労働に従事する人々

  • 女性や子どもの低賃金労働者

  • 高齢者や病弱者

  • 失業と就労を繰り返す人々

  • 労働者階級の最下層にいる人々

つまり、低賃金層は工場の正規的な労働者だけでなく、資本主義の周辺に押し出された人々も含

む広い社会層です。


3.工業の発展と低賃金労働

機械工業が発達すると、生産量は大きく増加します。

しかし、企業は機械を導入することで、熟練労働者への依存を減らし、より安い労働力を利用

できるようになりました。

特に影響を受けたのが、次の人々です。

  • 女性労働者

  • 子ども

  • 未熟練労働者

  • 農村から都市へ移住した労働者

  • 家内労働者

企業にとっては、同じ商品をより低い賃金で生産できることが利益になります。

その結果、労働者同士の競争が激しくなり、賃金が押し下げられる力が働きます。


4.低賃金の原因

マルクスは、低賃金が労働者個人の能力不足によって生じるのではなく、資本主義の仕組みと

結びついていると考えました。

① 労働力が余っている

資本が機械化を進めると、生産に必要な労働者数が減少します。

すると、仕事を求める労働者の数が、企業が必要とする人数を上回ります。

この「相対的過剰人口」が、賃金を下げる圧力になります。

② 労働者同士の競争

失業者や低賃金労働者が多いと、企業は「もっと安く働く人」を見つけやすくなります。

労働者は仕事を失わないために、低い賃金や悪い労働条件を受け入れざるを得なくなります。

③ 家族全員の労働

賃金だけでは生活できないため、夫だけでなく、妻や子どもも働くようになります。

家族全員が労働市場に入ると、企業は一人の男性労働者に高い賃金を支払わなくても、家族全体

の労働力を利用できます。

④ 家内労働の利用

工場の外で行われる家内労働は、賃金が低く、労働時間の規制も弱いものでした。

企業は生産工程の一部を家庭に回すことで、工場設備や管理費を節約し、労働者を低賃金で働か

せることができました。


5.女性・子どもへの影響

低賃金層の拡大は、女性や子どもに特に大きな犠牲をもたらしました。

当時のイギリスでは、子どもが工場や鉱山、家内労働の現場で働いていました。

子どもや女性は、男性よりも低い賃金で雇用できたため、企業にとって都合のよい労働力とされ

ました。

その結果、

  • 子どもの教育が妨げられる

  • 発育が悪化する

  • 家族の健康が損なわれる

  • 長時間労働が常態化する

  • 労働者家庭の貧困が世代を超えて続く

という問題が発生しました。

ここで重要なのは、家族全員が働いても、必ずしも生活が豊かにならなかったことです。

むしろ、一人ひとりの賃金が低く抑えられることで、家族全体が長時間働かなければならな

い状態になりました。


6.繁栄の裏側にある貧困

イギリスの工業発展によって、工場主や商人、金融業者は大きな富を得ました。

一方で、労働者の多くは次のような生活を送っていました。

  • 狭く不衛生な住宅

  • 栄養不足

  • 病気や労災への不安

  • 失業の危険

  • 借金や貧困

  • 子どもの早期労働

  • 高齢になった後の生活保障の不足

これは、資本主義的蓄積の特徴をよく示しています。

社会全体の富が増えているのに、その富を生み出した労働者の生活が安定しないという

矛盾です。


7.「富の蓄積」と「貧困の蓄積」

マルクスが強調したのは、資本の蓄積と貧困の蓄積が同時に進むという点です。

資本家側では、

  • 機械や工場が増える

  • 生産規模が拡大する

  • 利潤が資本として再投資される

  • 企業がさらに大きくなる

という蓄積が進みます。

しかし労働者側では、

  • 低賃金労働者が増える

  • 失業者が生まれる

  • 不安定な仕事が広がる

  • 労働条件が悪化する

  • 貧困が固定化される

という現象が起こります。

したがって、マルクスのいう貧困とは、全員が同じように極端な飢餓状態になるという意味で

はありません。

資本が豊かになるほど、労働者が資本に依存し、不安定な立場に置かれるという社会的な貧困

も含まれています。


8.重要な対立関係

資本家側

労働者側

機械・工場を所有する

労働力を売る

利潤を蓄積する

賃金で生活する

生産を拡大する

雇用を失う不安がある

労働者を選べる

仕事を選びにくい

富が増える

低賃金層が生まれる

危機の負担を転嫁できる

失業・減給の影響を受ける

この対立は、個人の善悪だけではなく、生産手段を誰が所有しているかという資本主義の構造

から生まれます。


9.マルクスの批判

マルクスは、資本家が労働者を意図的に貧困にしようとする場合だけを問題にしたのではあ

りません。

企業が競争に勝ち残るために、

  • 生産費を下げる

  • 賃金を抑える

  • 労働時間を延ばす

  • 機械を導入する

  • 安い労働力を利用する

という行動を取らざるを得ない仕組みそのものを批判しました。

資本家個人が善良であっても、競争に負ければ企業は倒産します。

そのため、資本主義では、資本家も労働者も市場競争の圧力に縛られています。


10.現代社会とのつながり

19世紀イギリスと現代日本は同じではありません。

しかし、次の点には共通性があります。

  • 非正規雇用の拡大

  • 低賃金のパート・アルバイト

  • 家計を支えるための共働き

  • 物価上昇に追いつかない賃金

  • 若者や高齢者の低賃金労働

  • 企業の機械化・IT化による雇用不安

  • 失業や病気による生活の急激な悪化

現代では、労働法や社会保障制度が整備されています。

それでも、企業の利益が増えているのに、労働者の実質的な生活が改善しない場合があります。

この問題を考えるうえで、マルクスの「富の蓄積と貧困の蓄積」という視点は、現在でも参考

になります。


✅今回の重要ポイント

  • イギリスの工業発展は、労働者全体の豊かさを保証しなかった

  • 機械化は生産力を高める一方、労働者を余剰化した

  • 女性・子ども・未熟練労働者が低賃金で利用された

  • 家内労働や不安定雇用が低賃金層を拡大させた

  • 失業者の存在が、働いている労働者の賃金を抑える力になった

  • 資本の蓄積と労働者の貧困は、同時に進行した

  • 貧困は個人の責任だけでなく、資本主義の構造と結びついている


✍️まとめ

第23章第5節bでマルクスは、イギリスの工業労働者階級を例にして、資本主義の発展が必ず

しも労働者の幸福を意味しないことを示しました。

資本は、機械化と労働者間の競争を利用して、生産規模と利潤を拡大します。

その一方で、社会には低賃金・不安定雇用・失業・家内労働などが広がります。

つまり、資本主義的蓄積の一般法則とは、

資本の富が増える過程で、資本に依存する労働者の不安定さと貧困も生み出される

という関係です。

2026年9月5日土曜日

 『資本論』再学習 第80回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第7篇「資本の蓄積過程」 第23章「資本主義的蓄積の一般法則」 第5節資本主義的蓄積の一般法則の例解a1846年から1866年のイギリス

 




📘『資本論』再学習 第80回

第1巻 第1冊「資本の生産過程」

第7篇「資本の蓄積過程」

第23章「資本主義的蓄積の一般法則」

第5節「資本主義的蓄積の一般法則の例証」

1846年から1866年のイギリス

1.今回のテーマ

第5節では、マルクスが第23章で説明してきた「資本主義的蓄積の一般法則」が、実際の

イギリス社会でどのように現れたのかを、統計資料や社会状況を使って示します。

この時期のイギリスは、産業革命が進み、工場・鉄道・貿易・機械工業が大きく発展し

ました。

一見すると、国全体が豊かになり、労働者の生活も改善したように見えます。しかし、

マルクスはその裏側にある貧困や過酷な労働に注目しました。


2.資本の急速な蓄積

1846年から1866年にかけて、イギリスでは次のような産業が拡大しました。

  • 紡績・織物工業
  • 石炭・鉄鋼業
  • 鉄道建設
  • 機械工業
  • 海運・国際貿易

企業は、労働者が生み出した剰余価値を再び機械や工場に投資しました。

その結果、生産規模は拡大し、資本家の富は増加していきました。

しかし、資本の成長が、そのまま労働者の幸福につながったわけではありません。


3.富の増加と貧困の併存

この時期のイギリスでは、国富や企業利益が増えた一方で、労働者階級には次の問題

がありました。

  • 低賃金
  • 長時間労働
  • 劣悪な工場環境
  • 失業の不安
  • 住宅不足
  • 子どもや女性の過酷な労働
  • 病気や労働災害

つまり、社会全体の富が増加しても、その富が労働者に均等に分配されたわけではあり

ません。

マルクスはここに、資本主義の大きな矛盾を見ました。

富が増えるほど、貧困も同時に生み出される。

これが「資本主義的蓄積の一般法則」の実例です。


4.労働者が豊かになったように見える場合

産業が好況になると、労働者の賃金が一時的に上昇することがあります。

しかし、マルクスは、賃金が上がったとしても問題が解決したとは考えませんでした。

なぜなら、次のような変化が起きるからです。

①労働の強度が高まる

機械の速度が上がり、労働者は以前より多くの仕事をこなさなければならなくなります。

②労働時間が延びる

企業は、より多くの剰余価値を得るため、労働時間を長くしようとします。

③生活費も上昇する

都市化が進むと、家賃や食費などが増え、賃金上昇の効果が小さくなることがあります。

④失業者が存在する

産業が発展しても、機械化によって労働者が余剰となり、失業者が生み出されます。

そのため、働いている労働者も、失業の恐怖から企業の要求に従わざるを得なくな

ります。


5.鉄道建設と労働者の犠牲

この時期、イギリスでは鉄道建設が急速に進みました。

鉄道は社会の発展に大きく貢献しましたが、その建設現場では多くの労働者が非常に

厳しい条件で働きました。

  • 不安定な雇用
  • 危険な作業
  • 低い賃金
  • 遠隔地での長時間労働
  • 労働災害
  • 失業後の生活困難

鉄道や工場などの巨大な設備は、資本家にとっては利益を生む資産です。

一方、労働者にとっては、自分の労働力を売らなければ生活できない場所でもあり

ました。


6.産業予備軍の役割

マルクスは、失業者や半失業者を「産業予備軍」と呼びました。

産業予備軍は、企業にとって次のような役割を持ちます。

  1. 好況時には労働力をすぐ補充できる
  2. 不況時には大量に解雇できる
  3. 働いている労働者の賃金要求を抑えられる
  4. 労働者同士を競争させられる

つまり、失業者の存在は、資本主義にとって偶然の失敗ではなく、企業が労働力を安

く利用するための仕組みと結びついているのです。


7.アイルランドの事例

マルクスは、イギリスだけでなくアイルランドの状況にも注目しました。

アイルランドでは、農業や土地所有の問題によって、多くの人々が貧困に苦しんでい

ました。

土地を追われた農民がイギリスへ移住すると、都市部では低賃金労働者が増えます。

これはイギリスの労働者にも影響を与えました。

労働力の供給が増えることで、企業はより低い賃金で労働者を雇いやすくなったからです。

このように、資本主義は一国だけでなく、国際的な労働者の移動を通じても、労働者間

の競争を強めました。


8.資本主義の基本的な矛盾

第5節で示される重要な矛盾は、次の通りです。

資本主義の発展労働者側に起きること
工場が増える労働者の長時間労働
機械が進歩する労働者の失業・仕事の単純化
生産量が増える商品を買えない貧困層の増加
資本家の利益が増える富の格差が拡大
産業が発展する産業予備軍が形成される

社会の生産力は高まっているのに、多くの人々の生活は不安定なままです。

ここに、資本主義的生産の根本的な矛盾があります。


9.今回のまとめ

1846年から1866年のイギリスでは、産業と資本が急速に成長しました。

しかし、その発展は次のような犠牲を伴っていました。

  • 資本家の富の増大
  • 労働者の長時間・過酷労働
  • 失業者の増加
  • 労働者同士の競争
  • 貧富の格差
  • 生活の不安定化

マルクスが示したのは、単なる「貧しい人がいる」という事実ではありません。

資本が蓄積される仕組みそのものが、労働者の貧困や失業を生み出すということです。

✅今回の重要ポイント

  • 1846~1866年、イギリス資本主義は急速に発展した
  • 国富が増えても、労働者全体が豊かになったわけではない
  • 機械化・長時間労働・低賃金が広がった
  • 失業者は「産業予備軍」として存在した
  • 資本の蓄積と労働者の貧困が同時に進んだ
  • これが資本主義的蓄積の一般法則の実例である

一言でいうと

産業が発展し資本家が富を増やすほど、その裏側で労働者の不安定な生活と貧困も再生産された。


注目

 『資本論』再学習 第81回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第7篇「資本の蓄積過程」 第23章「資本主義的蓄積の一般法則」 第5節資本主義的蓄積の一般法則の例解bイギリスの工業労働者階級の低賃金層

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