『資本論』再学習 第108回クイズ
第2巻「資本の流通過程」
第1篇「資本の諸変態とそれらの循環」
第6章「流通費」第2節「保管費」
①在庫形成一般 ②本来の商品在庫
商品が倉庫にあるとき、それはすべて「売れ残り」なのでしょうか。また、保管にお金が
かかれば、その分だけ商品の価値は増えるのでしょうか。
今回は、「生産・消費を続けるために必要な在庫」と「売れないために積み上がった在庫」 の違いを中心に学びます。該当箇所に沿った記述式の10問です。解答・解説は最後にまと
めています。
第1問 在庫は資本主義に特有か
次の文章は正しいでしょうか。誤っている場合は、その理由も答えてください。
「在庫は、資本主義社会で商品を販売するために初めて生まれた。それ以前の自給的な
社会には在庫はなかった。」
第2問 在庫の三つの形態
マルクスが区別する在庫の三つの形態について、次の例に対応する名称を答えてください。
① 工場が、これから生産に使うために確保している原材料。
② 家庭が、自分たちで食べるために保存している米。
③ 商店が、販売するために保管している米。
第3問 売り手と買い手の立場
商品を売る資本家にとって、商品が在庫としてとどまる期間は、できるだけ短い方が望ま
しいといえます。
一方、原材料を買う資本家にとっては、市場に一定量の商品在庫があることが必要です。
この二つの立場の違いを説明してください。
第4問 保管費と純粋な流通費
次の二つの仕事には、どのような違いがありますか。**「使用価値」**という言葉を使っ
て説明してください。
① 商品の売買契約や代金の計算をする仕事。
② 保管中の穀物を湿気や害虫から守る仕事。
第5問 工場の在庫が減ったら?
ある織物工場では、必要なときに綿花を購入できるようになり、工場内の綿花在庫が減
りました。一方、綿花商人の倉庫には、以前より多くの綿花が保管されています。
この事実だけから、**「社会全体の在庫が減った」**と判断できますか。理由も答えて
ください。
第6問 必要な在庫量を左右する条件
生産を止めないために、工場が原材料をどれだけ備えておく必要があるかは、さまざま
な条件によって変わります。
必要な在庫量を左右する条件を、二つ以上挙げてください。
第7問 資本主義の発展と商品在庫
社会全体で生産される物の量が同じでも、資本主義的生産が広がると、商品在庫の形を
とる部分は増えることがあります。
それはなぜでしょうか。自給的な生産との違いに注目して答えてください。
第8問 正常な在庫と異常な在庫
次の二つの在庫は、それぞれどのような性質のものですか。
① 商店が、次の入荷まで販売を続けられるように商品を備え、売れた分を順次補充し
ている。
② 商品が予想どおりに売れず、以前の在庫が残ったまま新しい商品が届き、倉庫に積
み上がっている。
また、②の追加的な保管費は、支出したという理由だけで商品の価値に加わるでしょうか。
第9問 メーカーが売れば在庫は消えるか
あるメーカーが、製品をすべて卸売商人に販売し、代金も受け取りました。しかし、その
製品は卸売商人の倉庫に残っています。
この場合、次の二点について答えてください。
① メーカーにとって、商品から貨幣への転化は完了していますか。
② 社会全体から見ると、その製品は商品在庫ではなくなっていますか。
第10問 在庫形成の費用
マルクスは、この節の終わりで、在庫形成の費用を三つの内容に整理しています。
次の空欄を埋めてください。
① 生産物の量の( )。
② 生産物の品質の( )。
③ 在庫の保存に必要な( )労働と( )労働の支出。
ここから解答・解説です。まずは自分の言葉で答えてから確認してみましょう。
解答・解説
第1問の解答:誤りです。
在庫は、資本主義以前の社会にも存在します。例えば、自給的な農家も、次の収穫まで
食べる穀物や、次の作付けに使う種を保存します。
資本主義に特徴的なのは、在庫そのものの存在ではなく、在庫の大きな部分が「販売さ
れる商品」の形をとることです。「在庫」と「商品在庫」を区別しましょう。
第2問の解答
① 生産資本の形態にある在庫(生産的在庫)
② 個人的消費のための元本・予備の形態にある在庫(消費用の在庫)
③ 商品在庫、または商品資本の形態にある在庫
同じ米でも、家庭で食べるために保存されていれば消費用の在庫、商店で売るために置
かれていれば商品在庫です。
区別の基準は、物の種類だけでなく、社会の中でどのような役割を担っているかにあります。
第3問の解答:売り手には貨幣への転化の遅れ、買い手には生産を継続するための条件と
なるからです。
売り手にとって、商品が売れなければ、その商品に投じた資本を貨幣として回収できませ
ん。次の原材料の購入などに支障が出ることもあります。
一方、買い手は、必要な原材料が市場になければ生産を始めたり続けたりできません。
つまり、個々の売り手は早く売りたい一方、再生産全体には一定の商品在庫が必要なのです。
第4問の解答:商品の使用価値そのものに働きかけるかどうかが違います。
①の売買契約や計算は、商品と貨幣の交換に関わる仕事です。それ自体では、商品の品質
や使い道を保存・改善しません。
②の防湿・防虫作業は、穀物が食料などとして使える状態、つまり使用価値を保存します。
商品の価値も、その担い手である使用価値が失われれば維持できません。
ただし、保存のための作業なら、どのような支出でも価値に加わるわけではありません。
社会的に必要な在庫の保存なのか、単なる売れ残りによる追加費用なのかを区別する必
要があります。
第5問の解答:判断できません。
工場内の在庫が減っても、商人の倉庫にある在庫が増えていれば、在庫の所在と形態が
変わっただけかもしれません。
この例では、工場が持つ生産的在庫の一部が、商人の持つ商品在庫へ移ったと考えられます。
一つの企業の在庫削減と、社会全体の在庫削減は同じではありません。
第6問の解答例
原材料を供給する産業の生産量や、供給の確実性。
輸送・交通手段の発達、輸送にかかる時間や費用。
信用制度の発達。
原材料の生産期間や、収穫などの季節的な条件。
世界市場の発達による調達先の増加。
例えば、原材料が安定して短期間で届けば、工場は相対的に少ない手元在庫で操業できま
す。反対に、年に一度しか収穫できない原料などは、次の供給までの期間を支える備えが
必要です。
ただし、手元在庫が減った分を商人が保管している場合もあり、社会全体で確認すること
が大切です。
第7問の解答:直接使われていた生産物も、売買を経て使われるようになるからです。
自給的な農家が自分たちで食べる米は、販売のための商品在庫にはなりません。
しかし、販売を目的に生産されるようになると、その米は消費に入るまで、市場で買い
手を待つ商品になります。
したがって、生産量が同じでも、生産物が商品になる割合が高まれば、在庫のうち商品在
庫という形をとる部分も増えるのです。
第8問の解答
①は、販売と再生産の継続を支える正常な商品在庫です。
②は、販売の停滞によって積み上がった異常な商品在庫です。
①では、商品が順次売れ、次の商品に置き換わっています。一定の商品が一時的にとど
まることが、継続的な販売を可能にしています。
②では、その入れ替わりが滞っています。この販売難だけから生じる追加的な保管費は
、支出したからといって商品の価値に加わりません。
「長く売れなかったので倉庫代が増えた」という事情だけで、商品にそれだけの価値
が追加されるわけではないのです。
第9問の解答:①完了しています。②商品在庫のままです。
メーカーは製品を売って代金を受け取っているので、そのメーカーにとっての商品から
貨幣への転化は完了しています。
しかし、製品は商人の手に移っただけで、まだ生産や個人的消費に入っていません。
社会全体から見れば、商品在庫として残っています。
この違いによって、メーカーの販売が順調に見えても、流通の先で商品が滞留している
場合があります。
第10問の解答
① 生産物の量の減少。
② 生産物の品質の悪化。
③ 在庫の保存に必要な対象化された労働と生きた労働の支出。
「対象化された労働」とは、倉庫や保存用の設備・資材などに、すでに形として結びつ
いている労働です。「生きた労働」とは、保存や管理に従事する人が現在行う労働です。
在庫の維持には、保管のための支出に加え、量の目減りや品質の低下も伴います。必要な
保存費用が商品の価値に算入される場合でも、社会全体では、生産物を保存するために資
源と労働を費やしていることに変わりはありません。


