📘『資本論』再学習 第78回
第1巻 第1冊「資本の生産過程」
第7篇「資本の蓄積過程」
第23章「資本主義的蓄積の一般法則」
第3節「相対的過剰人口、または産業予備軍の累進的生産」
✅今回の重要ポイント
資本の蓄積が進むと、機械・設備への投資が増える
生産力が高まり、少ない労働者で多くの商品を生産できる
その結果、働くことのできる労働者の一部が余剰になる
この余剰労働者を、マルクスは「相対的過剰人口」と呼んだ
相対的過剰人口は「産業予備軍」として、企業にとって必要な存在になる
好況時には雇用され、不況時には失業する労働者が生まれる
資本の富が増える一方で、労働者の不安定さも拡大する
1.「相対的過剰人口」とは何か
ここでいう「過剰人口」は、社会全体にとって人間が多すぎるという意味ではありません。
資本主義の生産にとって、今すぐ必要な労働者数を超えているという意味です。
つまり、労働者が不要なのではなく、
資本が利益を上げるために、現在すぐには雇う必要がない労働者
ということです。
そのため「相対的」と呼ばれます。
社会に人間が多すぎる
↓
資本の生産に必要な労働者が相対的に少なくなる
↓
相対的過剰人口が生まれる
2.なぜ過剰人口が生まれるのか
資本家は、競争に勝つために生産性を高めようとします。
そのため、利益の一部を次のようなものへ投資します。
機械
工場設備
コンピューター
ロボット
輸送システム
生産管理技術
すると、一人の労働者が以前より多くの商品を生産できるようになります。
例
この場合、社会全体の生産力は上がっています。
しかし、資本家から見ると、以前と同じ生産量を少ない労働者で実現できます。その結果、
40人は解雇されたり、雇用されにくくなったりします。
3.産業予備軍とは何か
相対的過剰人口は、単なる失業者だけではありません。
次のような人々も含まれます。
現在失業している人
一時的に仕事を失った人
パートや短期雇用で働く人
景気が悪いと雇い止めになる人
仕事を探しているが、すぐには見つからない人
低賃金で不安定な仕事をしている人
これらの人々は、企業にとって「必要なときに雇える労働力」です。
そのため、マルクスは相対的過剰人口を「産業予備軍」と呼びました。
好況になる
↓
企業が労働者を必要とする
↓
産業予備軍から労働者を採用する
不況になる
↓
企業が人員を削減する
↓
労働者が産業予備軍に戻る
4.産業予備軍が賃金に与える影響
失業者や不安定な労働者が多いと、現役労働者は賃金引き上げを要求しにくくなります。
なぜなら企業は、
条件が合わなければ、ほかの労働者を雇う
ことができるからです。
その結果、産業予備軍は現役労働者に対して、次のような圧力を及ぼします。
賃金が上がりにくい
長時間労働を断りにくい
解雇を恐れて要求を控える
非正規雇用が増える
労働条件が悪化しやすい
したがって、産業予備軍は資本にとって、労働力を確保するための「予備」であると同時に、現
役労働者を統制する力にもなります。
5.資本の蓄積と貧困の蓄積
第23章の中心的な考え方は、次の対比です。
マルクスは、資本主義では富の蓄積と貧困の蓄積が、別々に起こるのではなく、同じ生産過程
の中で同時に進むと考えました。
資本の蓄積
↓
機械化・生産性向上
↓
必要労働者数の相対的減少
↓
相対的過剰人口の増加
↓
賃金・雇用への圧力
6.マルクスが批判した考え方
当時の経済学では、失業の原因を労働者の人数が多すぎることに求める考え方がありました。
しかし、マルクスはそれを批判しました。
問題は、人間そのものが多すぎることではありません。
問題は、
資本が利益を生み出すために必要とする労働者数が、技術や機械によって相対的に減少す
ること
にあります。
つまり、失業は単なる人口問題ではなく、資本主義の生産方法と深く結びついているのです。
7.やさしい具体例
ある町に工場があり、100人が働いていたとします。
新しい自動機械を導入した結果、工場は60人で同じ生産量を維持できるようになりました。
40人は職を失います。
その後、工場の注文が増えれば、20人が再び雇われるかもしれません。しかし注文が減れば、
雇われた20人も解雇される可能性があります。
このように労働者は、
雇用される
↓
景気悪化
↓
解雇される
↓
産業予備軍になる
↓
景気回復
↓
再び雇用される
という状態に置かれます。
8.現代社会との関連
現代では、次のような現象が第3節の内容と関係します。
工場の自動化・ロボット化
AIやコンピューターによる業務の効率化
非正規雇用や短期契約の増加
派遣労働やギグワーク
景気後退時の大量解雇
企業による人員の柔軟な調整
高齢者や若者の不安定就業
もちろん、現代の雇用問題を19世紀のまま説明することはできません。
しかし、
生産性が上がっても、その利益がすべての労働者の安定や賃金上昇につながるとは限らない
という点は、現在にも通じる重要な視点です。
9.第1節・第2節・第3節の流れ
第3節では、第2節で説明された「可変資本の相対的減少」が、労働者の雇用や生活にどのよう
な結果をもたらすのかが、さらに具体的に説明されています。
🔑核心
第3節の核心は、次の一文にまとめられます。
資本主義の蓄積は、富を増やすだけでなく、資本にとって相対的に余剰となる労働者、
つまり産業予備軍を同時に生み出す。
これは、労働者個人の能力不足や努力不足だけで失業を説明するのではなく、資本の蓄積と生
産方法の変化から雇用問題を考える視点です。
📝まとめ
資本蓄積によって機械化・自動化が進む
生産力が上がると、少ない労働者で生産できる
その結果、資本にとって相対的に余る労働者が生まれる
これが「相対的過剰人口」である
相対的過剰人口は「産業予備軍」として、景気に応じて雇用・失業を繰り返す
産業予備軍の存在は、現役労働者の賃金や労働条件にも影響する
資本の富の蓄積と、労働者の不安定さの蓄積が同時に進むことが、第3節の重要な指摘
である
一言でいうと
資本が成長するほど、資本に必要とされる労働者と、必要とされない労働者の差が広がり
、産業予備軍が増えていく。

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