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2026年8月31日月曜日

資本論』再学習 第75回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第7篇資本の蓄積過程第23章資本主義的生産の一般法則について解説

 



📘『資本論』再学習 第75回

第1巻 第1冊「資本の生産過程」

第7篇「資本の蓄積過程」

第23章「資本主義的蓄積の一般的法則」

※章の表題は、一般的には次のように表記されます。

第23章「資本主義的蓄積の一般的法則」

「資本主義的生産の一般法則」ではなく、資本の蓄積が労働者の雇用・賃金・生活にどのような

影響を及ぼすのかを明らかにする章です。


✅今回の重要ポイント

  • 資本家は剰余価値の一部を資本に変え、生産規模を拡大する

  • 資本の蓄積が進んでも、すべての労働者が豊かになるとは限らない

  • 機械や設備への投資が増えると、労働力への需要が相対的に低下する

  • 資本主義は、必要なときに雇用できる「産業予備軍」を生み出す

  • 失業者や不安定労働者の存在が、現役労働者の賃金を抑える力になる

  • 一方に富が蓄積され、他方に貧困や不安定さが蓄積される

  • これは資本家個人の性格ではなく、資本主義の仕組みから生じる


① 資本の蓄積とは何か

資本家は、生産活動によって得た剰余価値をすべて個人的に消費するわけではありません。その

一部を、新しい機械・工場・原材料・労働力の購入に回します。

このように、剰余価値を追加資本へ変えることを、マルクスは資本の蓄積と呼びました。

資本の流れを簡単に示すと、次のようになります。

生産 → 剰余価値の獲得 → 追加投資 → 生産規模の拡大 → さらに多くの剰余価値

資本家は競争の中に置かれているため、蓄積を止めることが困難です。新しい機械を導入し、生

産性を高めなければ、ほかの企業との競争に負けてしまうからです。

そのため、資本の蓄積は資本家個人の好みではなく、競争によって強制される運動でもあります。


② 資本が増えれば労働者も豊かになるのか

資本の蓄積が進み、生産規模が拡大すると、最初の段階では多くの労働者が必要になります。

労働力への需要が増えれば、賃金が上昇する場合もあります。労働者の生活状態が一時的に改善

することもあります。

しかし、マルクスは次のように考えました。

賃金が上昇しても、賃金労働そのものがなくなるわけではない。

労働者は、生産手段を所有していません。生活するためには、自分の労働力を資本家に売り続け

なければなりません。

賃金が多少上昇しても、

  • 生産手段は資本家が所有する

  • 労働者は労働力を売る

  • 労働者が生み出した価値の一部を資本家が取得する

  • 剰余価値が追加資本になる

という基本的な関係は変わりません。

つまり、資本の蓄積は同時に、資本と賃金労働の関係を拡大再生産する過程なのです。


③ 資本の「有機的構成」が高度化する

第23章を理解するうえで重要なのが、資本の有機的構成という考え方です。

資本家が投資する資本は、大きく二つに分けられます。

資本の種類

内容

具体例

不変資本

生産手段に使われる資本

機械、工場、原材料、設備

可変資本

労働力の購入に使われる資本

労働者に支払う賃金

資本主義が発展すると、機械化・自動化・技術革新が進みます。その結果、労働力に使われる資

本に比べて、機械や設備に使われる資本の割合が大きくなります。

これが、資本の有機的構成の高度化です。

例えば、以前は100人で行っていた仕事が、新しい機械の導入によって20人でできるようになる

ことがあります。

生産量は増えても、必要な労働者数は以前ほど増えません。場合によっては、労働者が削減さ

れます。


④ 資本の蓄積が労働者を「余らせる」

一見すると、人口が増えたために失業者が生まれるように見えます。

しかしマルクスは、資本主義のもとでの過剰人口は、単純な人口増加によって生まれるのではな

いと考えました。

機械化や生産性の向上によって、資本が必要とする労働者の割合が低下します。その結果、働く

能力があっても資本に雇われない人々が生み出されます。

これが相対的過剰人口です。

「相対的」と呼ばれるのは、社会全体にとって人間が余っているのではなく、資本の利潤獲得に必要な人数を超えているという意味だからです。

社会には必要な仕事がたくさん残っていても、利益につながらなければ雇用は生まれません。

したがって、「人が余っている」のではなく、資本の側から見て「雇う必要がない」と判断され

ているのです。


⑤ 産業予備軍とは何か

相対的過剰人口は、資本にとっての産業予備軍になります。

産業予備軍とは、景気が良くなったときには雇用され、景気が悪くなったときには解雇される労

働者層です。

資本主義経済には、好況と不況の波があります。

景気の状態

労働者の動き

好況

生産拡大のため雇用が増える

過熱期

労働力不足が起こり、賃金が上がる場合がある

不況

生産縮小、解雇、失業の増加

回復期

失業者の一部が再び雇用される

資本は、必要なときだけ労働者を雇い、必要がなくなれば雇用を減らします。

産業予備軍は、資本の膨張と縮小に対応するための「利用可能な労働力」として機能します。


⑥ 産業予備軍が賃金を抑える

失業者や不安定雇用の労働者が多いと、現役の労働者は次のような不安を抱えます。

  • 仕事を失うかもしれない

  • 自分の代わりになる人がいる

  • 賃上げを要求すると解雇されるかもしれない

  • 厳しい労働条件でも我慢せざるを得ない

そのため、産業予備軍の存在は、雇用されている労働者にも影響を与えます。

労働者同士が仕事をめぐって競争させられ、賃金や労働条件を改善する力が弱められるからです。

マルクスは、賃金の動きが単純な人口の増減によって決まるのではなく、現役労働者と産業予備軍の割合に大きく左右されると考えました。


⑦ 相対的過剰人口の三つの形態

マルクスは、相対的過剰人口を主に三つの形態に分けています。

1.流動的形態

企業の拡大や縮小、機械化、景気変動などによって、雇用と失業を繰り返す人々です。

現代では、契約終了や企業の業績悪化によって職を失う人、非正規雇用を転々とする人などが近

い存在といえます。

2.潜在的形態

農村などに存在し、必要に応じて都市の工業労働者へ転換される可能性のある人々です。

農業の機械化や土地の集約によって農村で働けなくなった人が、都市へ移動して賃金労働者に

なります。

3.停滞的形態

仕事には就いているものの、賃金が低く、労働時間が長く、雇用が非常に不安定な人々です。

現代の状況にそのまま当てはめることはできませんが、日雇い労働、短時間雇用、不安定な非正

規雇用などを考える手掛かりになります。

さらに、その下には、働く機会をほとんど失い、極度の貧困状態に置かれた人々が存在します。


⑧ 資本の集中と集積

資本の蓄積が進むと、個々の資本が大きくなるだけではありません。資本は、次第に少数の大資

本へ集まっていきます。

マルクスは、これを「集積」と「集中」に分けて説明しました。

用語

内容

資本の集積

剰余価値を蓄積し、個々の資本が成長すること

資本の集中

合併・買収や競争によって、既存の資本が少数に集まること

大企業は、新しい機械や大規模設備を導入しやすくなります。それによって生産性が上がり、小

規模な企業は競争に敗れる可能性が高まります。

競争によって資本が集中し、資本の集中がさらに機械化を進めるという循環が生まれます。


⑨ 富の蓄積と貧困の蓄積

第23章で最も有名なのが、資本の蓄積と貧困の関係です。

資本主義では、生産力が発展し、社会全体で生み出される富が増えていきます。しかし、その富

がすべての人に平等に行き渡るわけではありません。

一方では、

  • 資本

  • 生産手段

  • 利潤

  • 社会的な支配力

が蓄積されます。

他方では、

  • 失業

  • 低賃金

  • 不安定雇用

  • 長時間労働

  • 生活不安

が生み出されます。

マルクスは、この関係を資本主義的蓄積の絶対的・一般的法則として示しました。

ただし、これは「すべての労働者が毎年必ず貧しくなる」という単純な意味ではありません。

労働者の生活水準が上昇する時期があっても、資本に対する従属、雇用の不安定さ、富や権力の

格差が拡大する可能性があるということです。


⑩ 現代社会とのつながり

第23章の考え方は、現代の経済を考えるうえでも重要です。

例えば、AI・ロボット・自動化が普及すれば、生産性が高まり、少ない人数で多くの商品やサー

ビスを生み出せるようになります。

これは本来、人間の労働時間を短くし、生活を豊かにする可能性を持っています。

しかし、技術が資本の利潤拡大を優先して利用されれば、

  • 人員削減

  • 雇用の二極化

  • 非正規雇用の増加

  • 技能による賃金格差

  • 失業への不安

  • 労働強度の上昇

につながる場合があります。

技術そのものが失業を生み出すのではありません。技術が、誰によって、何を目的に使われるの

かが問題なのです。


⑪ 個人の努力だけでは説明できない

失業や貧困は、しばしば本人の努力不足として説明されます。

しかし第23章の分析によれば、資本主義はその運動のなかで、一定数の失業者や不安定労働者

を繰り返し生み出します。

したがって、すべてを個人の責任にすることはできません。

もちろん、教育や技能習得は個人にとって重要です。しかし、全員が新しい技能を身につけても

、経済全体で十分な雇用が用意されなければ、失業問題は解決しません。

マルクスは、個人の能力ではなく、雇用と失業を生み出す社会の構造を明らかにしようとしたのです。


⑫ 第23章全体の構成

第23章は、次の五つの節から構成されています。

節

主な内容

第1節

資本構成が変わらない場合、蓄積が労働力需要に与える影響

第2節

蓄積の進行に伴う可変資本の相対的減少

第3節

相対的過剰人口・産業予備軍の形成

第4節

相対的過剰人口の形態と貧困

第5節

資本主義的蓄積の一般法則を示す歴史的な事例

今回の第75回は、第23章全体を理解するための総論です。次回から各節を詳しく読むと、資本

の蓄積と労働者人口の関係が、より具体的に見えてきます。


✅まとめ

資本主義的蓄積の一般的法則とは、次のような関係です。

資本の蓄積が進む
→ 機械・設備への投資が増える
→ 労働力への需要が相対的に減る
→ 相対的過剰人口が生まれる
→ 産業予備軍が形成される
→ 賃金と労働条件が抑えられる
→ 富の蓄積と貧困・不安定さの蓄積が同時に進む

資本主義は巨大な生産力を発展させます。しかし、その発展が自動的にすべての人の幸福につな

がるわけではありません。

社会の富を生み出している労働者が、同時に失業や生活不安にさらされる――この矛盾を明ら

かにしたことが、第23章の最大の意義です。

2026年8月30日日曜日

 資本論』再学習 第74回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第7篇資本の蓄積過程第22章剰余価値のれ資本への転化第5節いわゆる労働基金について解説

 



📘『資本論』再学習 第74回

第1巻 第1冊「資本の生産過程」

第7篇「資本の蓄積過程」

第22章「剰余価値の資本への転化」

第5節「いわゆる労働基金について」

※表題は一般的に、次のように整えられます。

「いわゆる労働基金について」

「労働基金」は、翻訳によって「労働財源」「賃金基金」と表記されることもあります。


✅今回の重要ポイント

  • 労働基金とは、労働者の賃金に充てられる資金のこと

  • 古典派経済学は、労働基金を「あらかじめ決められた一定額」と考えた

  • その立場では、賃金を上げると雇用できる労働者が減ることになる

  • マルクスは、労働基金の大きさは固定されていないと批判した

  • 資本家のぜいたくや浪費に回る資金を、賃金や生産に回すこともできる

  • 労働基金説は、低賃金や失業を避けられないものに見せる役割を果たした


1.「労働基金」とは何か

労働基金とは、簡単にいえば、資本家が労働者の賃金を支払うために用意する資金です。

資本家が生産を始めるとき、資本は大きく二つに分かれます。

資本の部分

用途

不変資本

原料・機械・建物などの購入

可変資本

労働力の購入、つまり賃金の支払い

このうち、労働基金に当たるのは、主として労働者の賃金に使われる可変資本です。

例えば、ある会社が次のように資本を使うとします。

  • 機械・原料など:800万円

  • 労働者の賃金:200万円

  • 合計:1,000万円

この場合、200万円が労働基金に相当します。


2.古典派経済学の「賃金基金説」

当時の古典派経済学には、社会全体で賃金に使える資金は、あらかじめ一定額に決められて

いるという考え方がありました。

これを一般に賃金基金説といいます。

考え方を簡単な式で示すと、次のようになります。

労働者1人当たりの平均賃金
=賃金基金の総額÷労働者数

例えば、労働基金が1,000万円で、労働者が100人なら、1人当たりの平均賃金は10万円です。

労働基金

労働者数

1人当たりの賃金

1,000万円

100人

10万円

1,000万円

80人

12万5,000円

1,000万円

125人

8万円

基金が固定されているなら、労働者数が増えるほど1人当たりの賃金は下がります。

ここから、次のような主張が導き出されました。

  • 賃金を引き上げれば、雇用できる人数が減る

  • 労働者が増えれば、賃金が下がる

  • 労働者全体の賃金を大きく増やすことはできない

  • 労働組合が賃上げを要求しても、社会全体の労働基金は増えない

  • 貧困や低賃金の原因は、資本主義ではなく人口の多さにある

つまり、低賃金や失業を「仕方のない自然現象」のように説明する理論だったのです。


3.マルクスは何を批判したのか

マルクスは、労働者に支払われる資金の総額が、自然法則によって固定されているという考え

方を批判しました。

資本家が所有する富には、さまざまな使い道があります。

剰余価値

 ├─追加資本として蓄積する

 │ ├─生産手段の購入

 │ └─労働力の購入

 │

 └─資本家の収入として消費する

   ├─生活費

   └─ぜいたく・浪費

どれだけを蓄積に回し、どれだけを個人的消費に回すかは、最初から固定されているわけでは

ありません。

さらに追加資本のうち、どれだけを機械や原料に使い、どれだけを労働者の雇用に使うかも、

資本家の判断や経済状況によって変化します。

したがって、労働基金は絶対に動かせない一定額ではないのです。


4.労働基金は「自然に決まる」のではない

古典派経済学では、労働基金が社会の外から与えられた一定量のように扱われました。

しかし実際には、その大きさは次のような事情によって変わります。

  • 資本家がどれだけ蓄積するか

  • 資本家がどれだけぜいたく品を消費するか

  • 機械と労働力にどのような割合で資本を投じるか

  • 労働時間や労働強度をどこまで高めるか

  • 労働者1人当たりの賃金をいくらにするか

  • 企業が何人の労働者を雇うか

  • 生産力がどれだけ発展しているか

このため、労働基金の大きさは、自然法則ではなく、資本家による資本の配分と資本主義的な社会関係によって決まると考えるべきです。


5.資本家のぜいたく品は削れないのか

マルクスが問題にしたのは、労働者の生活費だけが厳格な限界に押し込められる一方で、

資本家のぜいたくな消費は疑問視されないことです。

例えば、ある資本家が得た剰余価値が1,000万円だったとします。

使い道

配分例A

配分例B

資本家の個人的消費

600万円

300万円

追加資本

400万円

700万円

合計

1,000万円

1,000万円

配分例Bでは、資本家が個人的消費を減らし、その分を追加資本に回しています。

さらに追加資本700万円の内訳も変えられます。

追加資本の用途

配分例

機械・原料

500万円

労働力の購入

200万円

合計

700万円

この200万円が、新たな雇用や賃金のための労働基金になります。

このように、労働基金の大きさは、社会的・経済的な選択によって変わるのです。


6.労働基金説に隠された矛盾

労働基金説には、大きな矛盾があります。

労働者の賃金については、

「支払える金額には限界がある」

と説明します。

その一方で、資本家の収入やぜいたくについては、

「それも一定の権利であり、削減できない」

と扱われがちです。

しかし、賃金と資本家の収入は、どちらも社会で生産された価値の分配に関係しています。

労働者に回る部分だけを固定し、資本家に回る部分を動かせないものとして扱うのは、公平な

説明ではありません。

マルクスは、この理論が資本家に有利な分配関係を自然法則のように見せていると批判したのです。


7.労働基金の本当の起源

資本家が労働者に支払う賃金は、一見すると資本家自身のお金から支払われているように見えます。

しかし資本の再生産が続けば、その様子は変わります。

労働者は生産活動によって、次のものを生み出します。

  • 自分の賃金に相当する価値

  • 資本家が取得する剰余価値

労働者が前の生産期間に生み出した商品が販売されると、その代金の一部が次の賃金の支払い

に使われます。

つまり、社会全体で見ると、労働者は自分たちが過去に生産した価値の一部を、賃金として受

け取っていることになります。

労働者が生産する

        ↓

商品に新しい価値が生まれる

        ↓

商品が販売される

        ↓

価値の一部が資本家の手元に入る

        ↓

その一部が次の賃金として支払われる

資本家が永遠に自分の財産から労働者を養っているわけではありません。むしろ、労働者が再

生産した価値が、資本家を経由して賃金として戻ってくるのです。


8.労働者の消費には二重の意味がある

労働者は賃金を使って、食料、衣服、住宅などを購入します。

これは個人の生活のための消費ですが、資本主義社会では別の役割もあります。

労働者が生活できれば、翌日も働くことができます。また、家族を養うことによって、将来の

労働力も再生産されます。

したがって、労働者の消費は単なる個人的消費ではありません。

労働者の生活の維持
=労働力の維持と再生産

資本にとって労働者は、労働力の供給者です。そのため賃金は、労働者が健康で文化的に豊

かに暮らすためではなく、基本的には労働力を再生産できる範囲に抑えようとする力が働きます。


9.現代社会とのつながり

「労働基金」という言葉は現在あまり使われませんが、似た考え方は残っています。

例えば、賃上げを求めたときに、次のような説明がされることがあります。

  • 人件費の総額は決まっている

  • 賃金を上げると雇用を減らすしかない

  • 最低賃金を上げると企業が倒産する

  • 社会保障を増やす財源はない

  • 非正規労働者の待遇改善には限界がある

企業ごとに支払い能力の違いがあるため、すべてを単純に否定することはできません。しかし

、次の支出が十分に検討されているかを見る必要があります。

  • 株主への配当

  • 経営者の報酬

  • 企業内部に蓄積された利益

  • 不要不急の投資

  • 広告費や管理費

  • 自社株買い

  • 労働者への賃金

「賃金に回すお金がない」という言葉をそのまま受け入れるのではなく、生み出された価値が誰に、どのように分配されているのかを確認することが重要です。


10.第5節の核心

マルクスが批判したのは、単に労働基金の金額を計算する方法ではありません。

問題の中心は、労働者に分配される部分を固定し、それを超える要求を非現実的なものとして

退ける考え方です。

労働基金説の説明

賃金の総額は固定されている

    ↓

賃上げすれば失業が増える

    ↓

低賃金は避けられない


マルクスの批判

賃金の総額は固定されていない

    ↓

資本と剰余価値の配分によって変わる

    ↓

低賃金は自然法則ではなく社会的関係の結果

労働者の貧困を人口や自然の責任にするのではなく、資本主義における生産と分配の仕組みから

考えなければならないということです。


11.第22章全体との関係

第22章では、剰余価値がどのように資本へ転化し、資本蓄積が進むのかを分析してきました。

節

主な内容

第1節

剰余価値が追加資本に転化する仕組み

第2節

拡大再生産に対する古典派経済学の誤解

第3節

剰余価値を資本と収入に分ける「節欲説」

第4節

蓄積量を左右する諸条件

第5節

労働基金を固定的なものとする考えへの批判

第5節は、第22章のまとめに当たります。

剰余価値をどれだけ資本家が消費し、どれだけ蓄積に回し、その追加資本をどのように配分す

るかによって、労働基金も変化します。

したがって、労働者の賃金に回る金額だけが永久に固定されているという説明は成立しません。


✅まとめ

第5節「いわゆる労働基金について」で、マルクスは次のことを明らかにしました。

  1. 労働基金とは、労働者の賃金に充てられる資本である

  2. 古典派経済学は、その基金を固定された一定額と考えた

  3. その理論は、賃上げが失業を生むという説明に使われた

  4. しかし、労働基金の大きさは初めから固定されていない

  5. 剰余価値を蓄積と個人的消費に分ける割合は変えられる

  6. 追加資本を生産手段と労働力に分ける割合も変えられる

  7. 労働者の低賃金や貧困は、単なる自然法則ではない

  8. 問うべきなのは、社会で生産された価値が誰に分配されているかである

この節の核心を一言で表すと、次のようになります。

労働者に支払える賃金の総額は、自然によって固定されたものではなく、資本主義的な生産

と分配の関係によって決められている。

📌理解確認クイズ

問題:マルクスが労働基金説を批判した最大の理由は何でしょうか。

A.労働者は賃金を必要としないから
B.賃金に使われる資金は自然法則によって固定されていないから
C.すべての剰余価値を資本家が消費すべきだから
D.機械を使用すると商品が生産できないから

正解:B

労働基金の大きさは、剰余価値の分割、資本家の消費、追加資本の構成などによって変わります。

マルクスは、変化し得る社会的な分配関係を、変えられない自然法則のように説明することを批

判しました。


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