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2026年9月2日水曜日

📘『資本論』再学習 第77回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第7篇「資本の蓄積過程」 第23章「資本主義的蓄積の一般法則」 第2節「蓄積とそれに伴う集積の進行中における可変資本部分の相対的減少」

 


📘『資本論』再学習 第77回

第1巻 第1冊「資本の生産過程」

第7篇「資本の蓄積過程」

第23章「資本主義的蓄積の一般法則」

第2節「蓄積とそれに伴う集積の進行中における可変資本部分の相対的減少」

※ご質問の「資本主義的生産の一般法則」は、一般的には**「資本主義的蓄積の一般法則」**と表記されます。また「集積都」は「集積」です。


✅今回の重要ポイント

  • 資本の蓄積が進むと、生産規模は拡大する
  • 企業は利益の一部を機械・設備・原材料に再投資する
  • その結果、資本全体に占める労働力への支出が相対的に減少する
  • 生産量が増えても、労働者数が同じ割合で増えるとは限らない
  • 機械化によって、労働者の一部が余剰化する
  • その余剰労働力が「産業予備軍」や「相対的過剰人口」になる

①「可変資本」とは何か

資本を大きく2つに分けます。

区分内容価値の変化
不変資本(c)機械・工場・原材料など新しい価値を自ら増やさない
可変資本(v)労働者の賃金に使われる資本労働によって価値を増やす

労働者は、賃金以上の価値を生み出します。

たとえば、労働者に1日1万円の賃金を支払い、1日2万円分の商品価値を生み出したとします。

賃金 1万円 → 労働者の生活費
生み出した価値 2万円
差額 1万円 → 剰余価値

このように、労働力に投じられた資本は価値を増やすため、マルクスは「可変資本」と呼びました。


②蓄積によって資本は大きくなる

資本家は、商品を販売して得た剰余価値のすべてを個人的な消費には使いません。

一部を追加資本に変え、生産を拡大します。

剰余価値
   ↓
一部を消費
一部を再投資
   ↓
機械・工場・原材料の増加
労働力の追加
   ↓
生産規模の拡大

これが資本の蓄積です。

しかし、追加された資本がすべて労働者の賃金に向かうわけではありません。


③資本の「集積」とは何か

ここでいう集積とは、個々の資本が剰余価値を蓄積することで、資本の規模が大きくなることです。

たとえば、資本家が100万円の資本で事業を始め、利益の一部を再投資して、資本を500万円、さらに1,000万円へ増やしていく場合です。

個別資本の蓄積
      ↓
資本規模の拡大
      ↓
機械・設備・原材料の増加
      ↓
生産力の向上

つまり集積は、資本家が自分の得た利益を使って資本を大きくする過程です。


④なぜ可変資本の割合が減少するのか

資本が蓄積されると、資本家は競争に勝つために機械化・合理化を進めます。

最初は次のような資本だったとします。

資本の構成金額
機械・原材料など(不変資本)60万円
賃金に使う資本(可変資本)40万円
資本総額100万円

この場合、可変資本の割合は40%です。

ところが、機械化が進むと次のようになります。

資本の構成金額
機械・原材料など(不変資本)800万円
賃金に使う資本(可変資本)200万円
資本総額1,000万円

可変資本は40万円から200万円に増えています。

しかし、資本総額に占める割合は、

40万円 ÷ 100万円 = 40%
200万円 ÷ 1,000万円 = 20%

となり、労働力への支出は増えていても、その割合は低下しています。

これが「可変資本部分の相対的減少」です。


⑤「労働者が減る」とはどういう意味か

ここで注意が必要です。

マルクスが述べているのは、必ず労働者の人数が絶対的に減少するという意味ではありません。

重要なのは、

資本の増加に比べて、労働者数の増加が少なくなる

ということです。

たとえば、資本が2倍になっても、労働者数が2倍になるとは限りません。

資本総額       2倍
機械・設備     3倍
生産量         3倍
労働者数       1.2倍

このように、機械や設備の増加が労働者数の増加を上回ります。

そのため、資本全体に占める可変資本の割合が小さくなります。


⑥資本の有機的構成

この関係を表す言葉が、資本の有機的構成です。

資本の有機的構成 = 不変資本(c) : 可変資本(v)

機械や設備への投資が増え、労働力への投資の割合が減ると、資本の有機的構成は高度化します。

以前:c 60 : v 40
現在:c 80 : v 20

これは、資本家が労働者を意図的に苦しめたいからだけではありません。

資本主義では企業同士が競争しているため、より安く、より速く商品を生産する必要があります。

その結果、

競争
 ↓
機械化・合理化
 ↓
不変資本の増加
 ↓
可変資本の相対的減少
 ↓
労働者の一部が余剰化

という流れが生じます。


⑦相対的過剰人口と産業予備軍

機械化によって、現在の生産に必要な労働者数が減ると、仕事を失う人や、安定した仕事に就けない人が生まれます。

これをマルクスは相対的過剰人口と呼びます。

「人口が多すぎる」という意味ではありません。

社会全体にとって人間が多すぎるのではなく、

資本の運動にとって、現在必要とされる労働者が相対的に多すぎる

という意味です。

この人々は、企業にとっていつでも雇うことのできる労働力となります。

そのため、マルクスは産業予備軍とも呼びました。

機械化・合理化
      ↓
必要労働者の減少
      ↓
失業者・不安定労働者の増加
      ↓
産業予備軍の形成
      ↓
賃金を抑える力として作用

🔗個別資本から社会全体への論理

この節の論理は、次のように整理できます。

個別資本の競争
      ↓
剰余価値を再投資
      ↓
機械・設備の増加
      ↓
不変資本の比重が上昇
      ↓
可変資本の相対的減少
      ↓
労働者の一部が余剰化
      ↓
相対的過剰人口・産業予備軍
      ↓
賃金・雇用条件への圧力

❌よくある誤解

誤解1:資本が増えれば、全労働者が豊かになる

生産力が上がっても、利益の分配が労働者に平等に行われるとは限りません。

資本家は、利益をさらに機械や設備に投資するため、労働者の生活が自動的に安定するわけではありません。

誤解2:機械が増えれば、労働者は完全に不要になる

機械を動かし、製品を設計し、管理し、修理する労働者は必要です。

ただし、必要とされる労働者の種類や人数が変化します。

誤解3:失業は個人の努力不足だけが原因である

マルクスは、失業や不安定雇用を個人の能力だけで説明しません。

資本の蓄積と技術革新が、労働力の需要を変化させる社会的な仕組みに注目しています。


🌐現代とのつながり

現在でも、次のような現象にこの議論を見ることができます。

  • 工場の自動化・ロボット化
  • コンビニや銀行のセルフレジ
  • AIによる事務作業の効率化
  • 配送・倉庫の無人化
  • 非正規雇用や短時間労働の増加
  • 企業利益の設備投資への集中

技術は生産力を高め、人間の重労働を減らす可能性があります。

しかし、その利益が社会全体に分配されなければ、

企業の生産力向上
      ↓
利益の増加
      ↓
一部の労働者は高技能化
一部の労働者は仕事を失う
      ↓
雇用・賃金格差の拡大

という結果にもなります。


📝この節の核心

この節でマルクスが明らかにしたのは、次の点です。

資本の蓄積は、単に資本の量を増やすだけではない。機械や設備への投資を増やし、資本全体に占める労働力への支出を相対的に減少させる。その結果、労働者の一部が相対的過剰人口として形成される。


✅第77回のまとめ

  1. 資本は剰余価値を再投資して拡大する
  2. 再投資は機械・設備に多く向けられる
  3. 不変資本の割合が上昇する
  4. 可変資本の割合が相対的に低下する
  5. 生産量が増えても、雇用が同じ割合で増えるとは限らない
  6. 労働者の一部が相対的過剰人口になる
  7. 産業予備軍が賃金や雇用条件に圧力を加える

一文でまとめると

資本の蓄積は生産力を発展させる一方で、資本に必要とされる労働者の割合を相対的に減らし、失業や不安定雇用を生み出す仕組みを持っている。


2026年9月1日火曜日

 資本論』再学習 第76回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第7篇資本の蓄積過程第23章資本主義的生産の一般法則第1節資本組成不変なばあいにおける貯蓄に伴う労働力需要の増加について解説

 


📘『資本論』再学習 第76回

第1巻 第1冊「資本の生産過程」

第7篇「資本の蓄積過程」

第23章「資本主義的蓄積の一般的法則」

第1節「資本の構成が不変な場合に、蓄積に伴う労働力需要の増加」

※表題は、一般的には次のように表記されます。

「資本の構成が不変な場合に、蓄積に伴う労働力需要が増大すること」

ここでいう「貯蓄」は、個人がお金を銀行に預けることではありません。資本家が得た剰余価値

の一部を追加資本に変え、生産を拡大する「資本蓄積」を意味します。


✅今回の重要ポイント

  • 資本蓄積が進むと、生産規模が拡大する

  • 資本の構成が変わらなければ、労働力への需要も増える

  • 労働者への需要が供給を上回ると、賃金が上昇することがある

  • しかし、賃金が上がっても資本と賃労働の関係は変わらない

  • 賃金上昇には、資本蓄積を妨げない範囲という限界がある

  • 資本主義では、労働者の生活改善も資本増殖の仕組みに左右される


①「資本の構成」とは何か

マルクスは、資本を大きく二つに分けています。

資本の種類

内容

具体例

不変資本

生産手段に使われる資本

機械・工場・原材料

可変資本

労働力の購入に使われる資本

労働者に支払う賃金

資本の構成が不変であるとは、機械や原材料に使う資本と、労働力に使う資本との割合が変わら

ないことです。

例えば、資本100万円を次のように使うとします。

  • 不変資本:80万円

  • 可変資本:20万円

この比率のまま資本が200万円に増えれば、次のようになります。

  • 不変資本:160万円

  • 可変資本:40万円

可変資本が20万円から40万円に増えるため、雇用できる労働者の数も増えます。


②資本蓄積が労働力需要を増やす

資本家は、労働者が生み出した剰余価値のすべてを個人的に消費するわけではありません。

その一部を追加資本として生産に投入します。これが資本蓄積です。

資本の構成が変わらないなら、生産手段を増やすだけでなく、それを動かす労働者も同じ割合

で増やす必要があります。

そのため、資本蓄積は労働力需要の増加をもたらします。


労働者が剰余価値を生み出す

     ↓

剰余価値の一部を資本化する

     ↓

   生産規模を拡大する

    ↙    ↘

機械・原材料を追加 労働者を追加雇用

            ↓

       雇用と賃金総額が増加



③労働力需要が増えると賃金が上がる

資本蓄積が急速に進むと、多くの企業が労働者を必要とします。

労働者の供給よりも企業側の需要が大きくなれば、資本家は人材を確保するために賃金を上げ

なければなりません。

その結果、労働者には次のような変化が起こる可能性があります。

  • 賃金が上がる

  • 雇用が安定する

  • 失業者が減る

  • 食事や住居などの生活条件が改善する

  • 労働者が以前より多くの商品を買えるようになる

マルクスは、資本主義のもとで労働者の賃金や生活が改善する可能性そのものを否定している

わけではありません。


④賃金が上がっても「賃労働」はなくならない

ここが第1節の重要な点です。

賃金が上昇しても、労働者は自分の労働力を資本家に売って生活する存在であることに変わり

はありません。

資本家は労働力を購入し、労働者が賃金以上に生み出した価値を剰余価値として取得します。

例えば、労働者が1日に2万円分の新しい価値を生み出し、賃金として1万円を受け取ったとします。

内容

金額

労働者が生み出した新しい価値

2万円

労働者に支払われる賃金

1万円

資本家が取得する剰余価値

1万円

賃金が少し上昇しても、労働者が剰余価値を生み出す関係が続く限り、資本と賃労働の基本的な

関係は変わりません。

マルクスは、賃金上昇を「奴隷の鎖が少し長くなること」にたとえています。生活できる範囲が

広がっても、賃労働という仕組みから自由になったわけではないという意味です。


⑤資本蓄積は労働者自身が生み出している

資本家が追加投資に使う資金は、もともと労働者が生み出した剰余価値です。

つまり、労働者は自分たちの労働によって、翌年以降さらに多くの労働者を雇うための資本を生み

出しています。

この循環によって、資本は拡大していきます。

同時に、資本に雇われて働く労働者の数も増えていきます。資本蓄積は資本家の富を増やすだけ

でなく、賃労働の関係そのものを拡大再生産するのです。

   労働者の労働

      ↓

   剰余価値が生まれる

      ↓

剰余価値を追加資本に変える

      ↓

  新たな労働者を雇用する

      ↓

さらに大きな剰余価値が生まれる

      ↓

 再び追加資本へと転化される


⑥賃金上昇には限界がある

賃金は無制限に上昇するわけではありません。

賃金が上がりすぎて剰余価値が減り、資本家が十分な利益を得られなくなると、資本蓄積の勢い

が弱くなります。

すると、次のような動きが起こります。

  1. 賃金が上昇する

  2. 資本家の利益が圧迫される

  3. 新規投資や雇用が減少する

  4. 労働力需要が弱まる

  5. 賃金上昇が止まる

したがって、資本主義における賃金上昇は、基本的に資本の増殖を妨げない範囲にとどまります。


⑦賃金と資本蓄積の二つの場合

マルクスは、資本蓄積と賃金の関係を大きく二つの場合に分けて考えています。

場合① 賃金が上がっても蓄積が続く

労働力需要が増えて賃金が上昇しても、資本家が十分な剰余価値を得られる場合です。

この場合、資本蓄積はそのまま継続します。

場合② 賃金上昇によって蓄積が鈍る

賃金上昇によって利益が減り、資本蓄積の速度が落ちる場合です。

蓄積が鈍れば労働力需要も減少し、賃金上昇は止まります。場合によっては、再び賃金が下がる

こともあります。

つまり、労働力需要や賃金の動きは、資本蓄積の必要に従って調整されるのです。


⑧人口の増加が資本蓄積を決めるのではない

一般的には、次のように考えられがちです。

人口が増えたから労働者が余り、賃金が下がった。
人口が減ったから人手不足になり、賃金が上がった。

しかしマルクスは、人口だけで賃金の動きを説明することを批判します。

重要なのは、資本蓄積の速度と労働力需要の関係です。

  • 資本蓄積が速いと、労働力需要が増える

  • 資本蓄積が鈍ると、労働力需要が減る

  • 労働力需要の変化が賃金を上下させる

したがって、労働者人口が同じでも、企業の投資が活発か停滞しているかによって、雇用や賃金

は大きく変わります。


⑨現代社会に置き換えると

景気が良く企業が工場や店舗を増やすと、人手不足が起こりやすくなります。

企業は労働者を確保するため、次のような対応をします。

  • 初任給を上げる

  • 時給を引き上げる

  • 正社員を増やす

  • 福利厚生を充実させる

  • 外国人労働者を採用する

一方、景気が悪化して投資が減ると、求人も減少します。

  • 採用を停止する

  • 非正規雇用を削減する

  • 賃上げを見送る

  • 工場や店舗を閉鎖する

現代でも、労働力需要と賃金は企業の投資や資本蓄積の動きに強く左右されています。

ただし、第1節では資本の構成が変わらないという仮定が置かれています。機械化・AI化・自動化

によって、資本が増えても雇用が同じ割合では増えない問題については、次の節以降で扱われます。


✅まとめ

第23章第1節でマルクスが明らかにしたのは、資本の構成が変わらない場合、資本蓄積によって

労働力需要が増え、賃金が上昇する可能性があるということです。

しかし、労働者の生活が改善しても、労働者が労働力を売り、資本家が剰余価値を取得する関係

は変わりません。

さらに、賃金上昇が資本の利益や蓄積を大きく妨げるようになると、投資や雇用が抑えられ、

賃金上昇も止まります。

したがって、資本主義のもとでの賃金や雇用は、労働者の生活上の必要だけで決まるのではあり

ません。資本がどれだけ剰余価値を獲得し、蓄積できるかという条件に左右されます。

資本蓄積が労働力需要を増やし、賃金を上昇させることはある。しかし、その上昇は資本の増殖

を妨げない範囲に制限される。

これが、第23章第1節の中心的な結論です。


注目

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