『資本論』第2巻「資本の流通過程」第2篇 資本の回転、**第11章「固定資本と流動資本に関する諸理論」**における、**リカード(David Ricardo)**に関する解説です。章の文脈に即して整理します。
1. 前提:この章の狙い
この第11章で**Karl Marxは、
古典派経済学(とくにDavid Ricardo)が
固定資本と流動資本**をどのように理解し、どこで理論的に混乱したかを批判的に検討します。
ポイントは、
固定/流動という形態規定(回転様式)
利潤・価値・分配理論との混同
を暴き出すことにあります。
2. リカードの固定資本・流動資本理解
リカードはおおむね次のように区別しました。
固定資本
機械・建物・農具など、長期間使用され、徐々に価値を生産物へ移転するもの流動資本
原材料・賃金など、一生産過程で消費され、価値が一挙に生産物に移るもの
👉 この区別自体は、マルクスも基本的には正しい出発点だと認めています。
3. マルクスの批判①:回転規定の不徹底
マルクスによれば、リカードは
固定/流動資本の違いを
**「耐久性」「物的性質」**の違いとして理解しがちで、本質である
「価値がどのような時間構造で回転・回収されるか」
を十分に理論化できていない。
たとえば、
同じ「機械」でも
使用期間・回転期間の違いによって資本回転への影響は異なるしかしリカードは
回転時間と価値形成の関係を体系的に扱わなかった
👉 これが、のちの混乱の温床になります。
4. マルクスの批判②:固定/流動と可変/不変の混同
より重大なのはここです。
リカードの傾向
流動資本 ≒ 労働(賃金)を含む資本
固定資本 ≒ 機械・道具(不変資本)
という対応関係を、暗黙のうちに重ねてしまう。
マルクスの指摘
固定/流動資本
→ 資本の回転様式の違い可変/不変資本
→ 剰余価値を生むか否かという価値増殖の区別
この2つは理論的に別次元であり、
固定資本でも不変資本
流動資本の中に可変資本(賃金)も不変資本(原材料)も含まれる
👉 リカードはこの区別を明確にしなかった。
5. 利潤率論との混乱
リカードは、
固定資本の比重が高まると
利潤率がどう変動するか
を論じますが、ここでも問題が生じます。
問題点
利潤率の変化を
固定資本の量的増減で説明しようとするしかし実際には
回転速度・価値移転の時間構造が決定的
マルクスはここで、
利潤率の問題を解くには、
固定資本の「存在」ではなく
回転の仕方を見なければならない
と批判します。
6. マルクスの総括的評価
マルクスはリカードを単純に否定していません。
高く評価する点
労働価値説を一貫して追求
利潤・賃金・地代の関係を理論化
しかし限界として
資本の**運動過程(回転・流通)**を軽視
形態規定(固定/流動)と
価値規定(可変/不変)の混同その結果、
利潤率論・分配論に理論的歪みが残った
7. この章におけるリカードの位置づけ
第11章におけるリカードは、
古典派経済学の最高到達点
しかし同時に
資本の回転理論を欠いたために超えられなかった限界
を体現する理論家として扱われています。
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