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2026年9月7日月曜日

『資本論』再学習 第82回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第7篇「資本の蓄積過程」 第23章「資本主義的蓄積の一般法則」 第5節資本主義的蓄積の一般法則の例解c移動民

 


📘『資本論』再学習 第82回

第1巻 第1冊「資本の生産過程」

第7篇「資本の蓄積過程」

第23章「資本主義的蓄積の一般法則」

第5節「資本主義的蓄積の一般法則の例証」

c 移動民

1.「移動民」とは何か

ここでいう「移動民」は、民族や文化としての遊牧民ではありません。

19世紀イギリスで、鉄道建設、鉱山、運河、道路建設などを求めて、仕事のある場所から場所へ

移動させられた労働者たちを指しています。

彼らは農村出身者が多かったものの、実際には工業的な仕事に従事していました。マルクスは、

こうした人々を「資本の必要に応じて移動させられる労働者」として描いています。

2.資本にとっての「便利な労働力」

鉄道や鉱山などの大規模事業では、短期間に大量の労働力が必要になります。

しかし、工事が終われば、その地域での仕事はなくなります。

そのため労働者は、

  • 鉄道建設の現場

  • 鉱山

  • 運河工事

  • 道路建設

  • 大規模な土木工事

などを次々に移動しなければなりませんでした。

資本家にとって彼らは、必要な場所へすぐに投入できる「機動的な労働力」でした。

つまり、労働者は一つの地域に根を張った生活者ではなく、資本の都合によって配置される存

在になったのです。

3.「産業の軽歩兵」としての労働者

マルクスは、移動民的な労働者を、資本の「軽歩兵」にたとえています。

これは、彼らが資本の命令に従って、必要な場所へ送り込まれるという意味です。

戦争で軽歩兵が最前線へ動員されるように、資本は労働者を次の現場へ移動させます。

しかし、労働者本人にとっては、移動は自由な選択とは限りません。

仕事を失わないために、

  • 家族と離れる

  • 劣悪な宿舎で暮らす

  • 慣れない土地へ移る

  • 工事終了後に再び移動する

という生活を強いられました。

4.粗末な住宅と二重の搾取

鉄道会社や請負業者は、労働者のために簡易な小屋や宿舎を用意しました。

しかし、それらは衛生設備が不十分で、自治体の監督も届きにくい場所に建てられていました。

労働者はそこで、

  1. 労働力を提供して賃金を得る

  2. 会社や請負業者が用意した住宅に住み、住居費を支払う

という二重の関係に置かれました。

つまり、請負業者は労働者を「労働者」として搾取するだけでなく、「借家人」としても利益を得

たのです。原文でも、請負業者が労働者を労働力として、同時に借家人として利用したことが指

摘されています。

5.地主も利益を得た

鉱山地域では、地主も移動労働者から利益を得ました。

地主は土地を所有しているため、労働者が住む土地や住宅に対して高い地代を要求できます。

この場合、利益を得る者は一人ではありません。

  • 資本家・請負業者:労働によって利益を得る

  • 地主:土地や住宅の使用料によって利益を得る

  • 労働者:低賃金と高い住居費に苦しむ

労働者が生み出した価値が、資本家と地主の双方に吸い上げられる構造です。

6.移動民の生活が示すもの

「移動民」の例は、資本主義的蓄積の一般法則を具体的に示しています。

資本が成長しても、労働者の生活が安定するとは限りません。

むしろ、

  • 仕事はあるが、長期的な雇用ではない

  • 賃金を得ても、住居費で消えてしまう

  • 仕事のために頻繁な移動を強いられる

  • 労働者が地域社会から切り離される

  • 企業の都合で生活全体が左右される

という状況が生まれます。

マルクスが問題にしたのは、単なる貧困だけではありません。

労働者が「生活者」ではなく、資本の移動に合わせて運ばれる労働力へと変えられることでした。

7.現代とのつながり

現代にも、似た構造を見ることができます。

たとえば、

  • 建設現場を転々とする下請け労働者

  • 住み込みで働く季節労働者

  • 工場を移動する派遣労働者

  • 遠隔地の宿舎で暮らす外国人労働者

  • 会社寮や家賃補助に依存する低賃金労働者

などです。

もちろん19世紀イギリスと現代日本は同じではありません。しかし、「資本の必要に応じて労働

者が移動し、住居や生活まで企業に依存する」という点では、共通する問題があります。

✅今回の重要ポイント

  • 「移動民」は、仕事を求めて各地を移動する労働者層である

  • 鉄道・鉱山・土木工事などで大量に利用された

  • 労働者は資本の都合に合わせて配置された

  • 粗末な宿舎や高い地代によって、住居面でも搾取された

  • 資本家だけでなく地主も労働者から利益を得た

  • 資本の発展が、労働者の生活安定を意味するとは限らない

まとめ

第23章第5節「c 移動民」でマルクスが描いたのは、資本主義の発展によって生まれた、移動を

強制される労働者の姿です。

資本は利益を求めて移動します。そして、その資本に合わせて労働者も移動させられます。

ここには、資本が自由に動く一方で、労働者は生活のためにその動きへ従わざるを得ないという

、資本主義の力関係が表れています。

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