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2026年9月9日水曜日

『資本論』再学習 第84回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第7篇「資本の蓄積過程」 第23章「資本主義的蓄積の一般法則」 第5節資本主義的蓄積の一般法則の例解eイギリスの農業プロレタリアート





📘『資本論』再学習 第84回

第1巻 第1冊「資本の生産過程」

第7篇「資本の蓄積過程」

第23章「資本主義的蓄積の一般法則」

第5節「資本主義的蓄積の一般法則の例解」

e イギリスの農業プロレタリアート

1.農業が発展しても、農業労働者は豊かにならない

マルクスは、イギリス農業の発展と農業労働者の生活悪化を対比しています。

近代農業では、

  • 大規模農場の経営

  • 農業技術の改良

  • 機械の導入

  • 生産性の向上

  • 農産物の市場向け生産

が進みました。

しかし、その利益を受けたのは主に、

  • 大土地所有者

  • 借地農業経営者

  • 商人・金融業者

  • 農業資本家

でした。

一方、土地を持たない農業労働者は、賃金に頼って生活する「農業プロレタリアート」となり

ました。

つまり、農業の生産力は発展しても、そこで働く人々の生活が同じように改善するとは限らな

かったのです。マルクスはこれを、資本主義の矛盾が農業分野に現れたものとして説明します。

2.農民から農業労働者への転落

もともと農村には、小規模な農民や共同地を利用する人々が存在していました。

しかし、土地の囲い込みや大土地所有の拡大によって、農民は次第に土地や共同利用権を失

いました。

その結果、

  1. 自分の土地で生活できなくなる

  2. 生産手段を失う

  3. 農場主に雇われる

  4. 賃金だけで生活する

  5. 仕事がなければ救貧法に頼る

という状態に追い込まれました。

これは、第24章で詳しく扱われる「農民の土地からの収奪」ともつながっています。農民が土地

を失うことは、資本家にとっては労働力を確保する過程でもありました。

3.低賃金を救貧法で補った

当時の農業労働者の賃金は、家族全員を養うには不十分でした。

その不足分を補ったのが、自治体による救貧法の給付です。

つまり、農業労働者は働いて賃金を得ているにもかかわらず、それだけでは生活できず、教区

から公的扶助を受けなければなりませんでした。

これは一見すると労働者を助ける制度ですが、マルクスは別の側面を指摘します。

救貧法によって生活費の一部を社会が負担すると、農場主は賃金を低く抑えることができます。

その結果、

  • 農場主は低賃金で労働者を雇える

  • 不足分は公費で補われる

  • 納税者が農場主の賃金負担を肩代わりする

  • 労働者は貧困から抜け出せない

という構造が生まれました。

これは、現在の言葉でいえば「働いても生活できず、公的扶助で補うワーキングプア」に近い

構造です。

4.農業の発展と労働者の後退

マルクスの重要な観察は、農業の発展と労働者の生活が逆方向に進んだことです。

農業・資本の側

労働者の側

生産技術が進歩する

土地を失う

大農場が拡大する

小農民が減少する

農産物の生産量が増える

賃金だけに依存する

土地所有者の収入が増える

住居・食事・健康が悪化する

農業資本が蓄積する

貧困と不安定雇用が広がる

ここに、マルクスがいう「資本主義的蓄積の一般法則」が現れています。

資本が蓄積されるほど、労働者が豊かになるとは限りません。むしろ、富の増大と貧困の増大

が同時に進む場合があります。

5.農業労働者は「見えにくい貧困層」だった

工場労働者の場合は、工場や都市に集まっているため、貧困の実態が比較的見えやすくなります。

しかし、農業労働者は農村に分散していました。

そのため、

  • 労働者同士が結びつきにくい

  • 使用者に抵抗しにくい

  • 仕事を失うと代わりの職を見つけにくい

  • 農繁期と農閑期で収入が変動する

  • 家族労働や臨時労働に依存する

という弱い立場に置かれました。

農業労働は季節性が強いため、年間を通じて安定した仕事があるとは限りません。農閑期には

失業や半失業状態となり、農業労働者は常に低賃金労働者の予備軍として扱われました。

6.女性や子どもも低賃金労働に組み込まれた

農村の貧困家庭では、男性の賃金だけでは生活できませんでした。

そのため、

  • 女性が農作業や家内労働に従事する

  • 子どもも早い年齢から働く

  • 家族全体が賃金労働に動員される

  • 一人ひとりの賃金は低く抑えられる

という状態が広がりました。

家族全員が働いても、生活は豊かになりません。むしろ、家族の労働力を合計して、ようやく

最低限の生活ができるという状況でした。

これは、前回学習した「イギリスの工業労働者階級の低賃金層」と共通しています。

7.農業プロレタリアートの貧困は個人の責任ではない

マルクスは、農業労働者の貧困を「怠けているから」「能力がないから」とは考えません。

問題の根本は、農業労働者が土地や道具などの生産手段を失い、自分の労働力を売るしかなく

なったことです。

農業労働者は、働く意思があっても、

  • 土地を持っていない

  • 農具や家畜を持っていない

  • 生産物を自分で販売できない

  • 雇用主に賃金を決められる

  • 失業すれば生活できない

という構造の中に置かれていました。

したがって、貧困は個人の性格ではなく、資本主義的な土地所有と雇用関係から生じる社会的

な問題なのです。

8.今回の重要ポイント

  • イギリス農業は発展したが、農業労働者の生活は悪化した

  • 土地の囲い込みによって小農民は土地を失った

  • 土地を失った農民は賃金労働者になった

  • 低賃金を救貧法の給付で補わなければならなかった

  • 救貧法は、結果的に農場主の低賃金を支える面を持った

  • 農業の発展と農業労働者の貧困が同時に進んだ

  • 女性や子どもも低賃金労働に組み込まれた

  • 資本の蓄積は、労働者の豊かさを自動的には意味しない

まとめ

「イギリスの農業プロレタリアート」の節でマルクスが示したのは、農業の近代化の裏側です。

農業生産は進歩し、土地所有者や農業資本家は利益を拡大しました。しかし、その発展は、土

地を失った農民と低賃金で働く農業労働者の犠牲の上に成り立っていました。

資本の発展

農業生産の増大

農業資本家の利益増加

が進む一方で、

農民の土地喪失

低賃金

救貧法への依存

農業労働者の貧困

も同時に広がったのです。

これが、マルクスのいう「資本主義的蓄積の一般法則」の農村における具体例です。

 

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