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2026年1月2日金曜日

『資本論』の学習第115回第1巻 第4扁相対的剰余価値の生産第13章機械装置と大工業第6節機械装置によって駆逐された労働者に関する補償説について解説

 



『資本論』第1巻・第4篇「相対的剰余価値の生産」第13章「機械装置と大工業」第6節で論じられる
**「機械装置によって駆逐された労働者に関する補償説」**の解説です。


位置づけ

本節でマルクスは、機械化によって失業した労働者は、最終的には別の形で雇用が回復されるという当時の支配的な経済学(古典派経済学)の考え方、すなわち**「補償説(compensation theory)」**を批判的に検討します。


補償説とは何か

補償説は大きく言えば、次のような主張です。

機械の導入によって一時的に労働者が失業しても、
① 機械製造部門の拡大
② 生産費低下による需要増
③ 利潤増大による投資拡大
などによって、最終的には雇用は補償される

つまり「機械化は長期的には雇用を減らさない」という楽観的見解です。


マルクスの基本的立場

マルクスは、この補償説を抽象的・非現実的で、資本主義の現実を覆い隠す理論だとして批判します。

彼の核心的主張は次の点にあります。

  • 機械は労働力節約のために導入される

  • 資本は労働者の生活維持ではなく利潤増大を目的に運動する

  • したがって、雇用の「自動的回復」は保証されない


補償説への具体的批判

① 機械製造部門が雇用を補償するという主張への反論

  • 機械を作る労働者の数は、
    機械によって置き換えられた労働者数よりはるかに少ない

  • しかも高度な技能が必要で、
    駆逐された労働者が簡単に移行できない

👉 よって、量的にも質的にも補償にはならない


② 生産費低下 → 商品価格低下 → 需要増 → 雇用増 という論理への反論

  • 需要が増えても、それが必ず労働需要の増加につながるわけではない

  • 機械化された生産は、需要増を追加労働なしで処理できる

  • 需要増の恩恵は、主に資本の利潤として吸収される

👉 「需要増=雇用増」という前提自体が誤り


③ 利潤増大 → 投資拡大 → 雇用増 という主張への反論

  • 投資の方向は、しばしばさらなる機械化である

  • 結果として、相対的に必要な労働者数は減少

  • ここから生まれるのが産業予備軍(相対的過剰人口)

👉 利潤増大は、むしろ失業の再生産につながる


マルクスの重要概念:相対的過剰人口

マルクスは、機械化によって生まれる失業者を、資本主義にとっての**「異常」ではなく「必然」**と捉えます。

  • 機械化 → 労働需要の相対的減少

  • 失業者の存在 → 賃金抑制

  • 賃金抑制 → 剰余価値率の上昇

👉 失業者は、資本にとって**「調整弁」として機能する**


本節の理論的意義

第6節の意義は、次の点に集約されます。

  • 技術進歩を中立的・人道的なものとして描く経済学への批判

  • 機械は「社会全体の幸福」ではなく、資本の自己増殖の手段

  • 失業は技術の副作用ではなく、資本主義の構造的産物


まとめ(要点)

  • 補償説は、機械化による失業を過小評価するイデオロギー

  • マルクスは、補償が自動的・完全に起こることはないと論証

  • 機械化は、
    相対的剰余価値の増大と
    相対的過剰人口の形成を同時に生み出す



『資本論』第1巻 第4篇 第13章 第6節
**「機械装置によって駆逐された労働者に関するいわゆる補償説」**について、
原文(日本語訳)を短く引用しながら、その意味を逐条的に解説します。

※引用は学習目的のため最小限の分量にとどめ、一般的に流布している文語調訳を基にしています。


対象テクスト

資本論
第1巻/第4篇 相対的剰余価値の生産
第13章 機械装置と大工業
第6節 機械装置によって駆逐された労働者に関する補償説


① 補償説の提示(マルクスによる要約)

原文引用

「経済学者たちは、機械装置によって労働者が駆逐されても、その同じ機械装置が、他の方面では労働者を新たに雇用する、と主張する。」

解説

ここでマルクスは、補償説を自らの立場としてではなく、批判対象として要約しています。

  • 機械化による失業は「部分的・一時的」

  • 別の部門で雇用が生まれるから問題はない
    というのが補償説の基本論理です。

👉 重要なのは、マルクスはこの時点では反論せず、まず相手の主張を整理している点です。


② 機械製造部門による補償への反論

原文引用

「機械を製造する労働者の数は、それによって駆逐される労働者の数と比較すれば、取るに足りないものである。」

解説

これは補償説の第一の根拠への反論です。

  • 機械を作る部門でも労働は必要

  • だから雇用は補われる、という主張に対し

マルクスは、

  • 量的に釣り合わない

  • しかもその労働は高度に専門化されている
    と指摘します。

👉 駆逐された織工が、即座に機械工になれるわけではない。


③ 資本の再投資による補償への反論

原文引用

「資本が機械装置に転化されるとき、それは労働者に対する可変資本から、不変資本への転化である。」

解説

ここは理論的に非常に重要な箇所です。

  • 可変資本:賃金として労働者に支払われる資本

  • 不変資本:機械・原料など

機械化とは、

資本が「人間」から「物」へと姿を変えること

👉 つまり、同じ資本額でも雇用できる労働者数は減る


④ 需要増加=雇用増加という幻想への批判

原文引用

「生産力の増大は、必ずしも労働力への需要の増大を意味しない。」

解説

これは補償説の核心を突く一文です。

  • 商品が安くなる

  • 売れる量が増える

  • だから雇用も増える
    という素朴な発想を否定しています。

機械化された生産では、

  • 追加需要を追加労働なしで処理できる

  • むしろ同じ需要をより少ない労働で賄うのが目的

👉 生産力の上昇 ≠ 雇用の上昇


⑤ 相対的過剰人口の必然性

原文引用

「機械装置は、恒常的に労働者の一部分を過剰人口として投げ出す。」

解説

ここでマルクスは、補償説を完全に否定します。

失業は:

  • 一時的な事故ではない

  • 技術の未成熟でもない

👉 資本主義的機械制そのものが、失業を再生産する

この失業者層が、後に詳述される
**「産業予備軍(相対的過剰人口)」**です。


⑥ 補償説のイデオロギー性

原文引用

「このいわゆる補償説は、資本主義的生産様式の現実の運動を覆い隠すものである。」

解説

マルクスは補償説を、

  • 善意の誤解
    ではなく、

  • 支配的経済学のイデオロギー
    と見なします。

それは、

  • 機械=進歩=万人の幸福
    という図式を守るための理論であり、

  • 労働者の現実の困窮を理論的に不可視化する


全体まとめ(原文に即して)

  • 機械化は労働者救済の手段ではない

  • 補償は偶然的・部分的にしか起こらない

  • 失業者は資本にとって「不要物」ではなく
    賃金を抑え、剰余価値を高めるために必要な存在

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