『資本論』の学習第1巻第6扁労働賃金第17章労働力の価値または価格の労働賃金への転化に
ついて解説。
マルクス『資本論』第1巻 第6篇「労働賃金」第17章第18章「時間賃金」と第19章「出来高賃
金」
「労働力の価値または価格の労働賃金への転化」**について、学習用に構造的に解説します。
位置づけ
この章は、なぜ賃金が「労働そのものの価格」であるかのように見えてしまうのか、そしてそ
の見かけが資本主義の搾取関係をどのように覆い隠すかを理論的に解明する章です。
第6篇全体の中でも、賃金という日常的に自明視される形態の批判が核心になります。
基本前提の確認
まず、これまでの議論を前提として整理します。
労働者が資本家に売るのは
→ 労働(Arbeit)ではなく、労働力(Arbeitskraft)労働力の価値
→ 労働者とその家族が再生産されるために必要な生活手段の価値労働力の使用(=労働)
→ 必要労働時間を超えて行われ、剰余価値を生み出す
この区別は、理論上は明確です。
第17章の核心問題
問題:
現実の社会では、なぜ賃金が「労働の価値(価格)」として現れるのか?
結論:
→ 賃金という形態そのものが、
「労働力の価値」を「労働の価格」に転倒させて表示するから
1. 労働賃金の「転化」とは何か
本来の関係
支払われているのは
→ 労働力の価値(一定期間の使用権)生み出される価値は
→ 必要労働 + 剰余労働
現象上の関係
労働が終わった後に賃金が支払われる
労働時間全体に対して賃金が対応しているように見える
👉 その結果、
「すべての労働が支払われている」
「賃金=労働の対価」
という外観が成立する。
2. なぜこの転倒が必然なのか
マルクスは、これを単なる錯覚ではなく、資本主義的生産様式に必然的な現象形態だとします。
理由①:労働力と労働の使用が時間的に一致する
労働力は「使われることによってのみ」価値を実現する
使用と支払いが結びつくため、区別が見えなくなる
理由②:剰余労働が不可視になる
必要労働と剰余労働は同じ労働時間の中にある
したがって区別が意識されない
👉 結果として、搾取は見えなくなる
3. 労働賃金が隠蔽するもの
賃金形態が隠すのは、次の3点です。
無償労働(剰余労働)の存在
資本家による剰余価値の取得
階級関係としての搾取構造
マルクスの有名な趣旨を要約すると、
賃金形態は、
資本主義的生産関係のすべての痕跡を消し去る
4. 古典派経済学への批判
古典派経済学(スミス、リカードなど)は、
賃金=労働の価格
と理解したため、剰余価値の起源を説明できなかった
マルクスはここで、
経済学の理論的限界は、賃金形態の無批判的受容にあると示します。
5. 理論的意義(学習上のポイント)
この章の重要性は次にあります。
搾取は「不正」や「詐欺」ではない
搾取は等価交換の形をとって行われる
そのため、資本主義は
→ 自由・平等・公正に見える
👉 これが「資本主義イデオロギー」の基礎。
一文でまとめると
第17章は、
労働賃金という形態が、
労働力の価値と剰余労働の関係を転倒させ、
資本主義的搾取を不可視にする仕組みを解明する章
です。
資本論 第1巻 第6篇の続きとして、
**第18章「時間賃金」と第19章「出来高賃金」**を、**第17章で確立された理論(賃金=転倒
した形態)**を前提にして解説します。
第18章 時間賃金(Zeitlohn)
1. 時間賃金とは何か
時間賃金とは、
労働時間(1時間・1日・1週など)を単位として
一定額の賃金が支払われる形態
現代の 時給・日給・月給 は基本的にこれに属します。
2. 時間賃金の本質(第17章との連続)
時間賃金では、
表面上
→「1時間の労働の価格」が支払われているように見える実際には
→「一定時間の労働力の使用」が買われている
ここでも、
労働力の価値 → 労働の価格
という転倒が続いています。
3. 時間賃金がもたらす重要な錯覚
錯覚①:労働時間のすべてが有償に見える
必要労働時間と剰余労働時間は区別されず、
8時間すべてが「支払われた労働」
であるかのように見える。
👉 剰余労働が完全に不可視化される。
錯覚②:賃金の変動原因が見えなくなる
時間賃金では、
賃金の増減が
→ 労働時間の長短、強度、生産性の変化として現れる
その結果、
労働力の価値の変化
剰余価値率の変化
が、直接には見えなくなる。
4. 時間賃金と労働日の延長
時間賃金は、
労働日の延長
労働強度の上昇
を自然で正当なものとして見せる。
例:
「残業すればその分払う」
「長く働けば収入が増える」
👉 しかし実際には、
労働力の消耗が進み
剰余労働の割合が増大する
5. 第18章の要点
時間賃金は、
最も単純で
最も一般的だが
最も搾取を隠蔽しやすい
賃金形態である。
第19章 出来高賃金(Stücklohn)
1. 出来高賃金とは何か
出来高賃金とは、
生産された製品の個数
仕事の完成量
に応じて賃金が支払われる形態。
例:
1個○円
1本○円
1案件○円
2. 出来高賃金の本質
マルクスの重要な指摘:
出来高賃金は、時間賃金の変形にすぎない
理由:
単位製品あたりの賃金は、
一定時間内に生産される量
生産性水準
を前提に決まる。
つまり、
背後には常に「時間」がある。
3. 出来高賃金が生む追加的効果
効果①:自己強制の発生
出来高賃金では労働者自身が、
より速く
より多く
より長く
働こうとする。
👉 資本による監督が不要になる
効果②:競争の個人化
労働者同士が競争関係に置かれる
連帯が崩れやすくなる
結果として、
賃金水準の引き下げ
労働強度の恒常的上昇
が起こる。
効果③:賃金低下が見えにくい
出来高賃金では、
単価は同じでも
生産性上昇によって
事実上の賃金切り下げ
が起こりうる。
👉 労働者は「怠けているから稼げない」と思わされる。
4. 出来高賃金と資本主義的支配
マルクスは出来高賃金を、
最も資本主義的な賃金形態
搾取と自由意志が最も結合した形
と位置づけます。
「自分で選んで頑張っている」という感覚が、
実は最も深い従属を生む。
第18・19章の総括
第17章 → 第18・19章の流れは次のように整理できます。
第17章
賃金形態そのものが転倒を生む
第18章(時間賃金)
労働時間全体が有償に見える
第19章(出来高賃金)
労働者自身が搾取を推進する主体になる
一文でまとめると
時間賃金は搾取を「見えなく」し、
出来高賃金は搾取を「自発的」にする。
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