📘『資本論』再学習 第49回
第1巻 第1冊「資本の生産過程」
第4篇 相対的剰余価値の生産
第13章 機械装置と大工業
第5節「労働者と機械との闘争」
前回の第4節「工場」では、近代的な工場において、労働者が機械を動かすのではなく、反対
に労働者が機械の速度やリズムに従わされることを学びました🏭
今回の第5節では、機械によって仕事や生活を奪われた労働者が、なぜ機械を破壊するよう
になったのか、そして本当に闘うべき相手は機械そのものなのかを考えます。
🌟今回の重要ポイント
✅ 機械の導入によって、多くの熟練労働者が仕事を失った
✅ 労働者は当初、機械そのものを敵と考えて破壊した
✅ しかし問題は機械ではなく、機械を利潤のために使う資本主義的な仕組みにある
✅ 機械はストライキを破る武器としても利用された
✅ 労働者は、機械と闘う段階から資本の支配と闘う段階へ進んだ
1️⃣ 機械は労働者を助けるものではなかった
本来、機械は人間の負担を軽くし、労働時間を短くする可能性を持っています。
たとえば、10人で行っていた作業を機械によって1人でできるようになれば、社会全体とし
て必要な労働時間を減らすことができます。
しかし資本主義社会では、機械は労働者を楽にするためではなく、主に次の目的で導入さ
れます。
商品を安く大量に生産する
労働者の人数を減らす
賃金を引き下げる
剰余価値を増やす
資本家の利潤を拡大する
そのため、機械の発達がそのまま労働者の幸福にはつながりませんでした。
むしろ機械は、労働者にとって失業や賃金低下をもたらす存在として現れたのです。
2️⃣ 熟練労働者の仕事が奪われる
機械が普及する以前、職人や熟練労働者は、長い年月をかけて技術を身につけていました。
ところが機械が作業の中心になると、これまで労働者が持っていた技術の多くが機械の中に
取り込まれます。
たとえば、熟練した職人でなければできなかった仕事が、機械のレバーを操作するだけで
できるようになります。
すると資本家は、高い賃金を払って熟練労働者を雇う必要がなくなります。代わりに、低
賃金の未熟練労働者や女性、子どもを雇えるようになりました。
つまり機械は、熟練労働者の技術を無価値にし、その交渉力を弱めたのです。
3️⃣ 労働者は機械を破壊した
機械の導入によって仕事を失った労働者たちは、機械を自分たちの敵だと考えるように
なりました。
工場に押し入り、機械を壊したり、燃やしたりする運動も起こります。特にイギリスで起
きた機械破壊運動は、一般にラッダイト運動として知られています。
労働者から見れば、昨日まで自分たちが行っていた仕事を、今日は機械が奪っているよう
に見えました。
そのため、
「この機械さえなければ、私たちは仕事を失わなかった」
と考えるのは、ある意味では自然な反応でした。
しかしマルクスは、労働者が機械そのものと、機械の資本主義的な使用方法とを区別でき
るようになるまでには、時間が必要だったと指摘しています。
4️⃣ 本当の敵は機械そのものではない
マルクスが強調する重要な点は、機械そのものが労働者の敵なのではないということです。
機械は単なる生産手段です。使い方によっては、人間の労働を軽くし、労働時間を短縮し
、豊かな社会をつくることもできます。
問題は、機械が資本家の所有物となり、利潤を増やすために使用されることです。
資本主義のもとでは、機械によって生産力が向上しても、その成果は労働者全体には平
等に分配されません。
一部の労働者は過酷な長時間労働を続ける一方で、別の労働者は失業します。
つまり、
機械が人間を苦しめるのではなく、資本が機械を利用して労働者を支配する
という構造が問題なのです。
5️⃣ 機械はストライキを破る武器になる
機械は、生産を効率化する道具であるだけでなく、労働者の抵抗を抑える武器として
も利用されました。
労働者が賃上げや労働時間の短縮を求めてストライキを行うと、資本家は労働者の代
わりになる機械を導入しようとします。
これによって資本家は、労働者に対して次のように圧力をかけることができます。
「要求を受け入れないなら、君たちの仕事を機械にやらせる」
機械が導入されれば、少ない人数で生産を続けられます。そのため労働者の団結や交
渉力が弱められます。
マルクスは、機械が労働者の反乱やストライキに対抗するために、意図的に発明・改
良された例があることを紹介しています。
ここでは科学や技術さえも、資本と労働者の闘争から中立ではありません。
6️⃣ 失業者の存在が働く人を苦しめる
機械によって労働者が職場から追い出されると、失業者が増加します。
仕事を求める人が多くなれば、資本家は低い賃金でも労働者を雇えるようになります。
働いている労働者も、
「不満を言えば、代わりの人を雇われるかもしれない」
と考え、賃下げや労働条件の悪化を受け入れざるを得なくなります。
このように、機械が直接仕事を奪うだけでなく、失業者を増やすことによって、現在働
いている労働者にも圧力をかけます。
機械化による失業は、資本にとって労働者を従わせる力になるのです。
7️⃣ 機械によって新しい仕事も生まれるのでは?
機械が古い仕事をなくしても、新しい産業や仕事が生まれるという考え方があります。
実際、機械を製造する仕事、修理する仕事、新しい商品を販売する仕事などが生まれ
ることはあります。
しかしマルクスは、それだけでは問題は解決しないと考えます。
失業した人がすぐ新しい仕事に就けるとは限りません。熟練や経験が役に立たなくなり
、賃金が大きく下がる場合もあります。
また、新しく生まれる仕事の数より、機械によって不要になる労働者の数が多ければ、
失業問題は残ります。
したがって、
「いつか別の仕事が生まれるから問題ない」
と単純に考えることはできません。
大切なのは、技術革新によって生まれた利益や自由な時間を、社会全体でどのよう
に分配するかです。
8️⃣ 労働者の闘いは変化していく
初期の労働者は、機械を直接破壊しました。しかし経験を重ねるなかで、労働者は次第
に理解を深めていきます。
問題なのは機械そのものではなく、機械を所有し、労働者を失業や長時間労働へ追い込
む資本の力であると気づき始めます。
そこで闘いの方法も変化します。
機械を壊す
⬇労働組合をつくる
⬇賃金や労働時間の改善を要求する
⬇法律による労働者保護を求める
⬇生産手段を誰が所有し、何のために使うのかを問う
この変化は、労働者の闘いが感情的・個人的な抵抗から、社会的・組織的な運動へ成
長したことを示しています。
🤖現代のAI・ロボット問題にも通じる
この節の内容は、現在のAIやロボット、自動化の問題にもつながっています。
AIが人間の仕事を代替すること自体が、必ずしも悪いわけではありません。
AIによって必要な労働時間が短くなり、危険な仕事や単調な仕事から人間が解放され
る可能性もあります。
しかし、生産性向上の利益が企業や一部の株主だけに集中すれば、労働者には次のよ
うな問題が起こります。
雇用の削減
非正規雇用の増加
賃金の低下
監視や労働管理の強化
技術を持つ人と持たない人の格差拡大
問うべきなのは、
「AIは人間の敵か」
ではなく、
「AIを誰が所有し、誰の利益のために使うのか」
ということです。
これは、マルクスが機械制大工業について提起した問題とよく似ています。
📝今回のまとめ
第5節「労働者と機械との闘争」でマルクスが示したのは、機械の発達が自動的に人
間を幸福にするわけではないということです。
資本主義のもとでは、機械は労働者の負担を軽くする道具であると同時に、仕事を奪
い、賃金を下げ、ストライキを破る武器にもなります。
初めのうち、労働者は機械を敵と考えて破壊しました。しかし次第に、本当の問題
は機械そのものではなく、機械を利潤獲得の手段として使う資本の支配にあると理解
するようになります。
✅最も大切な点
労働者が闘うべき相手は機械そのものではなく、機械を労働者支配の手段
に変える資本主義的な利用方法である。
技術の進歩による利益を、一部の資本家だけのものにするのか。それとも労働時間の
短縮や生活の向上として社会全体で分かち合うのか。

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