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2026年8月6日木曜日

 『資本論』再学習 第53回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第4篇 相対的剰余価値の生産 第13章 機械装置と大工業 第8節大工業と工場手工業、家内労働の革命b工場手工業と家内労働への工場制度の反作について解説

 


『資本論』再学習 第53回

第1巻 第1冊「資本の生産過程」

第4篇 相対的剰余価値の生産

第13章 機械装置と大工業

第8節 大工業によるマニュファクチュア・手工業・家内労働の革命

b.マニュファクチュアおよび家内労働に及ぼす

工場制度の反作用

※ご質問の「反作」は、一般には「反作用」と表記されます。


今回の重要ポイント

✅ 工場制度は、工場の内部だけでなく、マニュファクチュアや家内労働の生産方法まで変える
✅ 機械・化学・自然科学を利用する工場の原理が、古い産業部門にも入り込む
✅ 固定化されていた分業が崩れ、生産方法が絶えず変更されるようになる
✅ 熟練労働者に代わり、女性・児童・非熟練労働者などの「低賃金労働」が利用される
✅ 近代的な家内労働は、独立した家族経営ではなく、工場・マニュファクチュア・商社の

「外部部門」になる
✅ 労働者が各地に分散するため、団結や抵抗が難しくなり、工場以上に深刻な搾取が起こる
✅ 資本は「見えない糸」によって、家庭で働く労働者まで支配する


1.「工場制度の反作用」とは何か

ここでいう「反作用」とは、労働者が工場制度に反対して抵抗することではありません。

機械制大工業のなかで成立した工場制度の原理が、工場の外に残っているマニュファクチュア、

手工業、家内労働に逆に働きかけ、それらの性格を変えてしまうことを意味します。

つまり、次のような動きです。

工場制度が発達する

工場で確立された生産原理が周辺産業へ広がる

マニュファクチュアや家内労働も資本主義的に再編される

マルクスは、工場制度が発展すると、ほかの産業部門でも生産量が増えるだけでなく、生産

そのものの性格が変わると指摘しています。『資本論』第1巻・第15章(英語原文)


2.工場制度の原理が社会全体に広がる

機械制工場では、生産工程を細かく分析し、それぞれの工程を機械、化学、物理学などの

自然科学によって処理します。

例えば、ある商品を作る過程が次のように分解されます。

  • 原料を切る

  • 加工する

  • 組み立てる

  • 仕上げる

  • 検査する

  • 包装する

そして、「どの工程を機械化できるか」「どうすれば時間を短縮できるか」が検討されます。

この工場制度の原理は、やがて機械制工場以外の産業にも入り込みます。最初は一つの工程

、次には別の工程というように、部分的な機械化が進められるのです。

その結果、古いマニュファクチュアに見られた固定的な分業体制が崩れていきます。

マルクスは、古い分業に基づく組織を「固い結晶」にたとえています。機械が個々の工程

に入り込むと、その結晶が溶かされ、生産方法が絶えず変化する状態へ移行します。


3.労働者の構成が変わる

工場制度の反作用によって変わるのは、生産技術だけではありません。そこで雇われる労働者

の構成も大きく変化します。

古いマニュファクチュアでは、長い経験を積んだ男性の熟練労働者が重要な位置を占めて

いました。

しかし、工程が単純化・細分化されると、資本家は高い賃金を必要とする熟練労働者に頼らな

くてもよくなります。

そこで利用されるのが、

  • 女性労働者

  • 年少者

  • 児童

  • 未熟練労働者

  • 低賃金で働かざるを得ない人

などです。

マルクスは、これらを当時のイギリスで呼ばれていた言葉を使って「チープ・レーバー」、

すなわち「安価な労働」と表現しています。

これは「女性や子どもの労働には価値がない」という意味ではありません。資本が社会的に

弱い立場の人々を利用し、労働力を安く買いたたくという意味です。


4.近代的家内労働は昔の家内工業と違う

ここは今回の非常に重要な部分です。

昔の家内工業では、農民や手工業者が自分の家、自分の道具、自分の技能を使い、ある程度独

立して商品を作っていました。

家族が自分たちで生産を管理し、市場で商品を販売する場合もありました。

しかし、機械制大工業の影響を受けた「近代的家内労働」は、それとは根本的に違います。

昔の家内工業

近代的家内労働

独立した手工業や農業が基礎

工場・商社・問屋への従属が基礎

自分で生産を管理する

発注者が数量・納期・価格を決める

自分の商品として販売する

賃金や出来高払いを受け取る

家が独立した生産場所

家が資本の外部作業場になる

生産者として一定の自立性がある

実質的には分散した賃金労働者になる

近代的家内労働者は、自宅で働いていても独立した生産者ではありません。工場、マニュフ

ァクチュア、問屋、商社などから仕事を渡され、その指示に従って生産します。

つまり、労働者の住宅が、資本の生産組織の一部へ組み込まれるのです。


5.家内労働は工場の「外部部門」になる

マルクスは、近代的家内労働を工場、マニュファクチュア、商社などの「外部部門」と位置

づけています。

資本は一方で、多数の労働者を一つの工場に集め、監督者や機械を通じて直接支配します。

その一方で、都市や農村に散らばる家内労働者にも仕事を発注します。労働者は資本家の姿を

直接見なくても、注文、納期、出来高単価、請負人などを通じて資本に従属します。

これをマルクスは、資本が「見えない糸」によって家内労働者を動かしていると表現しました。

マルクスが紹介したロンドンデリーのシャツ工場では、工場内で約1,000人を雇う一方、各地の

家庭で約9,000人を働かせていました。

工場の外で働く人のほうが、はるかに多かったのです。


6.なぜ家内労働の搾取は深刻になるのか

一見すると、自宅で働く家内労働は、工場労働より自由で楽な働き方に見えます。

しかしマルクスは、近代的家内労働では、工場以上に激しい搾取が起こり得ると指摘します。

① 労働者が分散している

工場では労働者が一か所に集まるため、同じ問題を話し合ったり、団結したりできます。

ところが家内労働者は都市や農村に分散しています。互いの労働条件を知ることが難しく

、資本に対する抵抗力が弱くなります。

② 中間業者が入り込む

資本家と労働者の間に、問屋、請負人、仲介人などが入ります。

中間業者も利益を得ようとするため、実際に働く人へ支払われる賃金はさらに少なくなります。

③ 工場製品との競争を強制される

家内労働者が作る商品は、機械制工場で大量生産される安い商品と競争しなければなりません。

工場製品に価格で対抗するため、家内労働者は低い出来高単価や長時間労働を受け入れざ

るを得なくなります。

④ 労働環境の費用を労働者が負担する

工場ならば、建物、照明、作業場所などは基本的に経営側が用意します。

家内労働では、作業する部屋、照明、暖房、道具などを労働者側が負担することがあります。

貧しい家庭では、狭く、暗く、換気の悪い部屋で働かざるを得ません。生活空間と作業空間

が分けられず、家族全体の健康にも影響します。

⑤ 仕事が不規則になる

注文が多いときには、短い納期に追われ、徹夜に近い長時間労働を強いられます。

反対に注文がなくなれば、突然仕事と収入を失います。

このように、

忙しいときは極端に忙しく、暇なときは収入がなくなる

という不安定な状態になります。

⑥ 過剰人口が集中する

機械や農業の変革によって仕事を失った人々が、最後の働き口として家内労働へ流れ込みます。

仕事を求める人が多くなるほど、労働者同士の競争が激しくなり、賃金は押し下げられます。


7.工場より機械が少ないのに、なぜ搾取が強まるのか

工場制度の技術的な長所は、機械を利用し、共同で大規模に生産することによって、労働の

生産力を高める点にあります。

ところが、マニュファクチュアや家内労働には、工場ほどの機械設備や共同作業の技術的

基盤がありません。

それにもかかわらず、資本は工場で生まれた「費用を徹底的に削減する原理」だけを持ち

込みます。

その結果、生産性の向上よりも、

  • 賃金の切り下げ

  • 労働時間の延長

  • 女性・児童の低賃金利用

  • 作業場所の費用転嫁

  • 安全・衛生条件の軽視

によって生産費を削減しようとします。

つまり、機械制大工業の進歩的な技術的側面ではなく、労働力を徹底的に節約・消耗させる

側面が、むき出しの形で現れるのです。


8.「生産手段の節約」と「労働力の浪費」

資本は、できるだけ少ない費用で多くの商品を生産しようとします。

原料、建物、機械、照明などを節約すること自体は、社会全体から見れば合理的な面があります。

しかし資本主義のもとでは、生産手段の節約が、労働者の生命や健康の犠牲と結びつきます。

例えば、家内労働では、

  • 狭い部屋に多くの人を詰め込む

  • 換気設備を設けない

  • 十分な照明を用意しない

  • 有害な物質を扱わせる

  • 長時間働かせる

  • 子どもまで働かせる

といったことが「費用の節約」として行われます。

資本にとっては経費削減でも、労働者にとっては健康と生命の浪費です。

マルクスは、生産手段を節約する一方で、人間の労働力を無謀に浪費するという資本主義的生

産の矛盾を明らかにしています。


9.前回の「a」と今回の「b」の関係

前回のaでは、機械が手工業的な協業や古い分業を置き換えることを学びました。

今回のbでは、機械制工場に完全には置き換えられていない分野も、工場制度の影響によっ

て変質することが説明されています。

a.手工業と分業に基づく協業の廃棄

b.工場制度の反作用

機械が古い協業を直接置き換える

工場の原理が周辺産業へ浸透する

生産工程が機械装置の内部へ移る

古い分業が部分的機械化で崩れる

機械制工場へ移行する

マニュファクチュアや家内労働が変質する

労働者が工場に集中する

労働者が家庭に分散したまま資本に支配される

したがって大工業の革命は、機械が設置された工場の内部だけで終わりません。

工場制度は社会全体の生産方法、雇用関係、家族生活、労働者の構成まで変えていくのです。


10.現代社会とのつながり

現代の在宅勤務やフリーランスが、そのままマルクスのいう家内労働に当たるわけではあ

りません。専門性が高く、自分で仕事や価格を選べる人もいるからです。

しかし、次のような働き方には共通点があります。

  • 出来高払いの内職

  • 縫製や部品組立の下請け

  • 配送・配達の業務委託

  • インターネット上の単純作業

  • データ入力や画像判定

  • プラットフォームを通じた低単価労働

  • 自宅で行う請負型のデジタル労働

働く場所は自由に見えても、発注者やプラットフォームが報酬、納期、評価、仕事の配分を

決めている場合があります。

さらに、パソコン、通信費、電気代、作業場所などを労働者自身が負担する点も、近代的家

内労働との類似性があります。

マルクスの「見えない糸」は、現代では注文システム、アプリ、アルゴリズム、評価制度な

どに置き換えて考えることができます。

ただし、歴史的な家内労働と現代の多様な在宅労働を、すべて同一視しないことも大切です。


まとめ

この節でマルクスが明らかにしたのは、工場制度が工場の外側にまで影響を広げる過程です。

機械制工場の発展によって、マニュファクチュアや家内労働がすぐに消滅するとは限りませ

ん。しかし、それらは昔の姿のまま残るのでもありません。

古い生産形態は、工場制度の影響を受けて資本主義的に再編されます。家内労働者は自宅

で働きながら、実際には工場・問屋・商社などの外部部門として働くことになります。

しかも、労働者が分散しているため団結しにくく、中間業者、低賃金競争、不規則な注文、

劣悪な作業環境が重なり、工場以上に露骨な搾取が現れる場合があります。

今回の核心は、次の一文にまとめられます。


機械制大工業は、古い生産形態を単に消滅させるだけでなく、それらを資本に従属す

る新しい形へ作り替える。

ここには、技術が発達しても、その成果が自動的に労働者の自由や生活改善につながるとは

限らないという、マルクスの重要な問題提起があります。





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