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2026年8月4日火曜日

『資本論』再学習 第51回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第4篇 相対的剰余価値の生産 第13章 機械装置と大工業 第7節機械経営の発達にともなう労働者の反発と索引。綿業恐慌について解説

 


📘『資本論』再学習 第51回

第1巻 第1冊「資本の生産過程」
第4篇 相対的剰余価値の生産
第13章 機械装置と大工業
第7節「機械経営の発達にともなう労働者の反発と索引――綿業恐慌」

前回の第6節では、機械によって失業者が生まれても、別の仕事が自動的に増えるという

「補償説」を、マルクスが批判しました。

今回の第7節では、機械制大工業が労働者を職場から追い出す一方、景気がよい時には新し

い労働者を大量に雇い入れるという、資本主義特有の動きを学びます。

※ご質問にある「反発と索引」は、一般的には「反発と吸引」と表記されます。ここでの

「反発」は労働者の抵抗ではなく、労働者を生産現場から排除することを意味します。


🌟今回の重要ポイント

✅ 機械は労働者を生産現場から「反発」し、失業者を生み出す
✅ 生産が拡大すると、資本は再び労働者を「吸引」する
✅ 雇用の増加は、機械による失業への恒久的な補償ではない
✅ 好況期には工場と雇用が急速に拡大する
✅ 過剰生産や市場の縮小が起きると、恐慌によって大量失業が発生する
✅ 労働者は、資本主義的な景気循環に生活を振り回される
✅ イギリスの綿業は、この矛盾が特に明確に現れた産業だった

1.「労働者の反発」とは何か

ここでいう「反発」とは、労働者が機械に反対して抵抗することではありません。

機械の導入によって、それまで必要とされていた労働者が生産現場から押し出されることです。

例えば、100人で行っていた仕事を新しい機械によって50人でできるようになれば、残りの

50人は職を失う可能性があります。資本家にとっては、生産性が上がり、商品の生産費を

引き下げられます。しかし、解雇された労働者にとっては、生活手段を失う重大な問題です。

機械は労働時間を短くし、人間の負担を軽くする可能性を持っています。しかし、資本主

義のもとでは、機械は主に利益を増やすために利用されます。

その結果、機械の発達が労働者の生活を豊かにするとは限らず、失業や賃金低下、不安定

な生活を生み出すことがあります。

2.「労働者の索引」とは何か

機械の導入によって、一時的に労働者が減らされても、生産規模そのものが拡大すれば、

工場は再び多くの労働者を必要とします。

これが「労働者の索引」です。

機械によって一人当たりの生産量が増え、商品が安くなると、市場が拡大することがあ

ります。商品が国内外で大量に売れれば、新しい工場が建設され、機械の台数も増加します。

すると、機械を動かす労働者や、原材料を運ぶ労働者などが新たに雇用されます。

つまり、機械経営には次の二つの動きがあります。

  • 機械が労働者を職場から追い出す「反発」

  • 生産規模の拡大によって労働者を雇い入れる「索引」

この二つが同時に、または交互に進みます。

3.雇用が増えれば「補償説」は正しいのか

生産が拡大し、工場労働者が増えたという事実だけを見ると、「機械が奪った仕事は、

新しい仕事によって補償された」と考えたくなります。

しかし、マルクスはそうした見方を批判します。

機械によって解雇された労働者と、新たに雇用された労働者が同じ人物とは限りません。

また、解雇された直後に新しい仕事が生まれるとも限りません。

失業した労働者は、新しい仕事が生まれるまでの間、収入を失います。新しい仕事に就く

ための技術や年齢、居住地などの条件が合わないこともあります。

さらに、後から増えた雇用は、機械が自動的に仕事をつくったからではありません。

市場の拸大、資本の蓄積、工場数や機械台数の増加によって生まれたものです。

したがって、雇用が増えたとしても、それは機械による失業を直接補償したものではな

いのです。

4.機械制大工業と景気循環

機械制大工業では、同じ商品を短期間に大量生産できます。

しかし、いくら商品をつくっても、それを買う人がいなければ売れません。生産能力が

拡大しても、人々の購買力が同じように増えるとは限らないからです。

資本家は、より大きな利益を求めて生産を拡大します。市場が好調な間は、商品が売れ、

工場も雇用も増えていきます。

ところが、商品が市場の需要を超えて生産されると、売れ残りが増加します。価格が下

落し、生産の縮小や工場の休業、倒産が起こります。

その結果、労働者は解雇されたり、労働時間や賃金を減らされたりします。

その後、売れ残った商品が処分され、生産設備が整理されると、景気が回復して再び生

産が拡大します。

この動きは、おおむね次のように進みます。

好況・生産拡大
→ 労働者の吸引
→ 過剰生産
→ 市場の停滞
→ 恐慌・生産縮小
→ 労働者の反発
→ 回復と再拡大

労働者の雇用は、資本の利益と市場の状態によって大きく変動します。

5.なぜ綿工業が取り上げられたのか

マルクスが活動した19世紀のイギリスでは、綿工業が機械制大工業を代表する産業でした。

紡績機や力織機などが導入され、綿糸や綿布を大量に生産できるようになりました。生産

性は大きく上昇し、イギリスの綿製品は世界各地に輸出されました。

市場が拡大した時期には、工場数や機械台数が増え、多数の労働者が雇われました。

しかし、綿工業は海外市場や原料供給に強く依存していました。そのため、海外市場の

不振や戦争、原料不足などが起きると、大きな打撃を受けました。

綿工業は、好況による急拡大と恐慌による急縮小を繰り返す産業だったのです。

6.綿業恐慌とは

イギリスの綿業では、機械による大量生産が進みました。各資本家は競争に勝つため、

より多くの商品を、より安く生産しようとしました。

しかし、社会全体としてどれだけの商品が必要なのかを、あらかじめ調整する仕組みはあ

りません。

そのため、市場の需要を超えて綿製品が生産されることがありました。売れ残りが増えると

、綿製品の価格が下落し、工場は操業を短縮したり停止したりします。

その影響を最も強く受けたのが労働者でした。

  • 解雇される

  • 労働日数を減らされる

  • 賃金を引き下げられる

  • 不安定な仕事に移らざるを得なくなる

  • 貧困や飢餓に追い込まれる

好況期には「工場を動かすために必要な労働力」として索引され、恐慌になると「余分

な労働力」として排除されます。

人間の生活が、資本の必要に合わせて調整されてしまうのです。

7.「綿花飢饉」の影響

マルクスは、1861年に始まったアメリカ南北戦争の影響にも注目しました。

当時、イギリスの綿工業は、原料となる綿花の多くをアメリカ南部に依存していました。

しかし、南北戦争や海上封鎖によって綿花の輸入が大幅に減少します。

この原料不足は「綿花飢饉」と呼ばれました。

綿花価格が上昇し、多くの工場が操業時間を短縮したり休業したりしたため、労働者は失

業や賃金減少に苦しみました。

ここでは、商品の過剰生産だけではなく、戦争による原料不足も綿業恐慌を深刻化させました。

しかも資本家は、質の低い綿花を使用したり、少ない原料からできるだけ多くの商品をつ

くったりして、損失を労働者へ転嫁しようとしました。機械の速度や労働時間、賃金の調

整を通じて、労働者側に負担が押しつけられたのです。

8.労働者は「産業予備軍」にされる

資本主義は、一方で労働者を雇用しながら、他方で失業者を生み出します。

失業者や不完全就業者が存在すると、資本家は必要な時に労働者を雇い入れることがで

きます。景気が悪くなれば、再び解雇できます。

このように、資本が必要な時に利用できる失業者や半失業者の集団は、後の第23章で

産業予備軍」として本格的に論じられます。

失業者が多ければ、働いている人も簡単に仕事を辞めにくくなります。賃上げや労働条

件の改善も要求しにくくなるため、失業者の存在は現役労働者にも影響を与えます。

9.現代社会にも通じる問題

この問題は、19世紀の綿工業だけのものではありません。

現代でも、AI、ロボット、自動化、セルフレジ、無人倉庫などの導入によって、従来の

仕事が減少することがあります。

一方、新しい産業や職業も生まれます。しかし、仕事を失った人が、そのまま新しい仕

事に移れるとは限りません。

求められる知識や技術が違うことに加え、年齢や地域、賃金などの条件が合わない

場合もあります。新しい仕事が不安定な非正規雇用である可能性もあります。

そのため、「技術が進歩すれば、失われた仕事は自然に補われる」と単純に考えることは

できません。

大切なのは機械やAIそのものを敵とすることではなく、それらが誰のために、どのよう

に使われるのかを考えることです。

10.マルクスが示した矛盾

機械は本来、人間を重労働から解放し、労働時間を短くできる可能性を持っています。

しかし、生産手段が資本によって所有され、利潤の獲得を目的として使われると、機

械の発達が失業、長時間労働、労働強化を生み出すことがあります。

技術の発達と労働者の生活向上が、自動的には結びつかないのです。

問題の中心は機械ではなく、機械を資本として使用する社会関係にあります。

📝今回のまとめ

第7節でマルクスは、機械制大工業が労働者を「反発」と「索引」の間で揺さぶることを

明らかにしました。

好況期には生産が拡大し、多くの労働者が雇用されます。しかし、過剰生産や市場の縮小、

原料不足などが起きると、工場は生産を縮小し、労働者を解雇します。

綿業恐慌は、機械制大工業の発達が安定した雇用を保証するのではなく、好況と恐慌を

繰り返しながら、労働者の生活を不安定にすることを示しました。

🌟今回の核心は、次の言葉にまとめられます。

機械制大工業は、労働者を必要に応じて吸引し、不要になれば反発する。技術が発

達しても、資本主義のもとでは労働者の生活が自動的に安定するわけではない。

技術の進歩によって生産力は高まります。しかし、その成果が労働時間の短縮や生活の向

上として労働者に還元されるかどうかは、機械の性能だけでなく、それを利用する社会の

仕組みによって決まるのです。


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