📚『資本論』再学習 第43回
第1巻 第1冊「資本の生産過程」
第4篇 相対的剰余価値の生産
第13章 機械装置と大工業
第1節 機械装置の発達
第1節でマルクスが明らかにするのは、人間が道具を使って生産する段階から、機械が道具を動
かす段階へ、どのように移行したのかという問題です。
工場手工業では、労働者が道具を手に持ち、自分の技能によって作業を行っていました。
しかし機械制大工業では、道具が機械に取り付けられ、機械が作業を行います。労働者は機械
を動かす中心的な存在から、機械を監視したり、材料を補給したりする存在へと変わってい
きます。
2.道具と機械の違い
道具と機械の違いは、単に「人力で動かすか、蒸気や電力で動かすか」ではありません。
例えば、手回しで動かす機械も機械です。一方、牛や馬に引かせる犂は、動物の力で動い
ていても基本的には道具です。
重要なのは、作業を行う道具を誰が操作しているかです。
道具を使う生産
労働者が手に道具を持ち、自分の身体や技能を使って作業します。
職人がハンマーを振るう
大工がノコギリを引く
糸を紡ぐ人が紡錘を操作する
この場合、道具は人間の手の延長です。
機械による生産
機械が複数の道具を備え、人間が行っていた作業を機械的に繰り返します。
つまり、
道具を動かす主体が人間から機械へ移る
ことが、道具から機械への決定的な変化です。
3.機械を構成する三つの部分
マルクスは、発達した機械装置を三つの部分に分けています。
① 原動機
機械全体を動かす力を生み出す部分です。
例としては、
水車
蒸気機関
電動機
内燃機関
などがあります。
原動力は、人力や動物の力から、水力・蒸気力・電力へと発展していきました。
② 伝動装置
原動機が生み出した力を、作業機へ伝える部分です。
例えば、
歯車
ベルト
軸
滑車
チェーン
などです。
一つの原動機から、多数の機械へ力を配る役割を果たします。
③ 作業機
実際に材料へ働きかけ、加工を行う部分です。
作業機には、それまで労働者が手に持っていた道具が取り付けられています。
例えば紡績機では、労働者が一本ずつ操作していた紡錘を、機械が多数同時に動かします。
マルクスが最も重視したのは、この作業機の発達です。
4.産業革命は作業機から始まった
蒸気機関が発明されたから、すぐに産業革命が始まったわけではありません。
マルクスは、産業革命の出発点を、蒸気機関そのものではなく、作業機の発明と発達に
見ています。
人間が一度に操作できる道具の数には、身体的な限界があります。
人間には腕が二本しかなく、手や足の動く速さにも限界があります。しかし機械であれば、
多数の道具を同時に動かせます。
例えば、手作業では一人の労働者が一つか二つの紡錘を操作していたのに対し、紡績機では
何十本、何百本もの紡錘を同時に動かせます。
こうして生産力は、人間の身体的な限界から解放されました。
5.単一の機械から機械体系へ
機械の発達は、一台の機械だけで終わりません。
最初は、同じ種類の機械を多数並べ、一つの原動機で動かす形が生まれました。さらに、
異なる種類の機械を生産工程の順序に従って結びつけるようになります。
例えば、
原料を準備する機械
原料を加工する機械
製品を仕上げる機械
包装する機械
というように、工程全体が機械によって連続的に行われます。
これが機械体系です。
機械体系が発達すると、人間の労働者は生産の中心ではなく、巨大な機械装置の一部分として配置されるようになります。
6.工場手工業との違い
工場手工業でも分業は行われていました。
しかし、工場手工業の分業は、労働者の熟練や手作業を基礎としていました。作業工程を細
かく分け、それぞれの労働者に担当させることで生産性を高めていたのです。
一方、機械制大工業では、作業工程そのものが機械の構造によって決められます。
工場手工業
労働者が道具を動かす
労働者の技能が重要
分業は人間の作業を細分化する
生産の速度は人間の能力に左右される
機械制大工業
機械が道具を動かす
労働者は機械を補助する
分業は機械体系によって決まる
生産速度は機械の性能に左右される
つまり、工場手工業では労働者が生産工程の中心でしたが、機械制大工業では機械装置が中
心になります。
7.機械を機械で生産する
機械制大工業が本格的に成立するには、機械そのものを機械によって生産できなければなり
ません。
初期の機械は、熟練した職人が手作業で製造していました。しかし機械が大型化・精密化すると、
人間の手作業だけでは製造が困難になります。
そこで旋盤、工作機械、切削機械などが発達し、機械部品を機械で生産するようになりました。
マルクスは、機械による機械の生産によって、機械制大工業が自らに適した技術的基礎を確
立したと考えます。
ここで大工業は、工場手工業への依存から抜け出し、自立した生産方式になります。
8.機械導入の資本主義的な目的
機械そのものには、人間の労働を軽くし、生活を豊かにする可能性があります。
しかし資本主義社会で機械が導入される直接の目的は、労働者を楽にすることではありません。
資本家が機械を導入する目的は、
商品を短時間で大量に生産する
商品一個当たりの価値を低下させる
労働力の価値を引き下げる
必要労働時間を短縮する
剰余労働時間を拡大する
ことです。
つまり、機械は相対的剰余価値を増大させる手段として利用されます。
社会全体で生活必需品の生産性が上がり、その価格が低下すれば、労働者が生活するために
必要な費用も低下します。その結果、労働力の価値が低下し、労働日のうち資本家のために
働く剰余労働時間が増えるのです。
9.人間と機械の関係の逆転
本来、機械は人間が作り出した労働手段です。
ところが資本主義的生産では、人間が機械を使うのではなく、機械が人間を使っているよう
な関係が生まれます。
労働者は機械の速度に合わせ、機械の動きを監視し、機械が止まらないように働かなければ
なりません。
生産の主導権が、
労働者の技能や判断
↓
機械装置と資本家の管理
へ移っていくのです。
これは単なる技術の進歩ではなく、生産現場における資本の支配力が強まることを
意味します。
🌟今回の重要ポイント
✅ 道具は労働者が操作するが、機械では機械が道具を操作する。
✅ 機械装置は「原動機」「伝動装置」「作業機」の三部分から成る。
✅ 産業革命の出発点は、蒸気機関だけでなく作業機の発達にある。
✅ 機械は、人間の手足や技能による生産の限界を突破した。
✅ 複数の機械が結びつき、連続的な機械体系が形成された。
✅ 機械を機械で生産することで、機械制大工業が自立した。
✅ 工場手工業では労働者が道具を使うが、大工業では労働者が機械に従属する。
✅ 資本主義における機械導入の目的は、労働の軽減ではなく、相対的剰余価値の増大
にある。
まとめ
第13章第1節でマルクスは、機械を単なる便利な発明として説明しているのではありません。
道具が労働者の手から離れ、機械装置に組み込まれることで、生産の中心が人間から機械体系
へ移りました。
その結果、生産力は飛躍的に高まりましたが、同時に労働者の技能や主体性は生産工程から切
り離され、機械と資本への従属が強まっていきます。
機械は人間を労働から解放する可能性を持っています。しかし資本主義のもとでは、まず資本を
増殖させ、相対的剰余価値を生産する手段として利用される――これが、この節を理解するうえ
で最も重要な点です。

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