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2026年7月29日水曜日

『資本論』再学習 第45回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第4篇 相対的剰余価値の生産 第13章 機械装置と大工業 第3節機械経営が労働者に及ぼす第1次的影響a資本による補助的労働力の領有 夫人労働と児童労について解説

 




📚『資本論』再学習 第45回

第1巻 第1冊「資本の生産過程」

第4篇 相対的剰余価値の生産

第13章 機械装置と大工業

第3節 機械経営が労働者に及ぼす第1次的影響

a 資本による補助的労働力の領有――婦人労働と児童労働

※見出しの「夫人労働」は、一般には**「婦人労働」**と表記されます。


🌟今回の重要ポイント

✅ 機械は、強い筋力や熟練を必要とする作業を減らした
✅ その結果、女性や子どもも工場労働に大量に組み込まれた
✅ 機械は労働を軽くする可能性を持ちながら、資本主義のもとでは搾取する人数を増やす

手段になった
✅ 一人の労働者の賃金ではなく、家族全員の賃金で生活する仕組みが広がった
✅ 家族全体が働くことで、一人当たりの労働力の価格は引き下げられた
✅ マルクスが批判したのは女性の社会進出ではなく、女性や子どもを安価な労働力として

強制的に利用する資本の仕組みである


1.「補助的労働力」とは何か

ここでいう「補助的労働力」とは、主として成人男性労働者以外の、

  • 女性

  • 子ども

  • 少年・少女

などの労働力を指します。

機械制工業が成立する以前、多くの手工業や工場手工業では、一定の筋力、経験、熟練した

技術が必要でした。そのため、成人男性の熟練労働者が生産の中心になっていました。

ところが、機械が作業の中心になると、労働者の役割は機械を直接操作したり、材料を供給し

たり、機械の動きを監視したりすることへ変わります。

機械が筋力や熟練の一部を代行することで、資本家は成人男性だけでなく、女性や子どもも

工場で働かせることができるようになりました。マルクスは、機械を使用する資本が最初に

求めたものの一つが、女性と子どもの労働だったと説明しています。


2.機械は労働者を解放したのか

機械そのものには、人間の重労働を軽くし、労働時間を短縮する可能性があります。

たとえば、それまで10人で行っていた重い作業を機械が代わりに行えば、本来ならば労働者

は少ない労力と短い時間で必要な生産物を作れるはずです。

しかし、資本主義的生産の目的は、労働者を楽にすることではありません。

資本家の目的は、

投下した資本を増殖させ、より多くの剰余価値を獲得すること

です。

そのため、機械によって成人男性の筋力が不要になると、資本はそれを労働時間の短縮で

はなく、働かせることのできる人間の範囲を拡大するために利用しました

つまり、

労働を減らすはずの機械が、賃金労働者の人数を増やす手段へ変わった

のです。

マルクスは、機械が年齢や性別を問わず、労働者家族の構成員を資本の支配下に組み込ん

だと指摘しています。


3.なぜ女性と子どもが雇われたのか

資本家にとって、女性や子どもの労働力を利用することには大きな利点がありました。

① 労働者の人数を増やせる

それまで父親一人が工場で働いていた家庭から、母親や子どもまで工場へ送り出すこと

ができます。

資本が利用できる労働力の人数が、一気に増えることになります。

② 成人男性より低い賃金で雇える

当時の社会では、女性や子どもの労働は成人男性の労働より低く評価されていました。

そのため資本家は、成人男性一人を雇うよりも、女性や子どもを含む複数の労働者を低賃

金で雇うことができました。

③ 労働者同士を競争させられる

成人男性だけでなく、女性や子どもも労働市場に入ると、働き口を求める人が増えます。

労働力の供給が増えるため、資本家は労働者を選びやすくなり、賃金を抑えやすくなります。

こうして機械制工業は、単に生産力を高めただけでなく、労働者同士の競争を激しくする

働きも持ちました。


4.家族全員が働くと賃金は増えるのか

一見すると、父親だけでなく母親や子どもも働けば、家族全体の収入は増えるように

見えます。

しかし、マルクスはここに重要な仕組みを見ています。

機械制工業以前には、一人の成人労働者の賃金によって、労働者本人だけでなく、妻や子

どもを含む家族の生活が支えられることが想定されていました。

ところが家族全員が賃金労働者になると、家族の生活費を得るために、父親、母親、子ど

もの労働力をそれぞれ資本家へ売らなければならなくなります。

たとえば、家族が生活するために1日1万2,000円必要だとします。

以前は父親一人の賃金が1万2,000円だったのに、機械制工業の拡大後には、

  • 父親 6,000円

  • 母親 4,000円

  • 子ども 2,000円

という形で、家族全員が働いて、ようやく同じ生活費を得るようになる可能性があります。

家族全体の収入だけを見ると同じですが、資本家は一人分に近い生活費で、三人分の労

働力を利用できます。

この意味で、家族全員が働くことは、必ずしも生活の豊かさにつながりません。

むしろ、一人の労働力の価値が家族全員に分割され、個々の労働力が安く売られるよう

になるのです。


5.労働力の「自由な売買」が変質する

資本主義社会では、労働者は自分の労働力を資本家へ売る「自由な契約者」であると説

明されます。

しかし児童労働が広がると、子ども自身が自由な意思で契約しているとはいえません。

実際には、親や保護者が子どもの労働力を資本家に提供します。

マルクスはこの状況を強く批判し、かつて労働者は自分自身の労働力を売っていたが、機

械制工業のもとでは妻や子どもの労働力まで売るようになった、と刺激的な表現で指摘し

ています。

これは親個人の道徳だけを批判しているのではありません。

家族全員が働かなければ生活できないほど賃金を低くする、資本主義的な経済関係そ

のものを問題にしているのです。


6.児童労働が奪ったもの

子どもが長時間工場で働かされると、単に身体が疲れるだけではありません。

🏭 遊ぶ時間が失われる

子どもの遊びは、身体や感情、社会性を育てるために必要です。

しかし、資本のための強制労働が子どもの遊びに取って代わりました。日本語の解説資料

でも、児童の遊びや家族のための家庭内活動が、資本家のための工場労働に置き換えられ

たことが紹介されています。

📚 教育を受ける機会が失われる

長時間工場で働けば、学校へ通ったり、本を読んだりする時間を確保できません。

教育を十分に受けられないため、成長してからも低賃金労働から抜け出すことが難し

くなります。

💪 健康と成長が損なわれる

成長期の子どもが不衛生な工場で長時間働けば、健康や身体の発育に重大な影響が生じます。

マルクスは、工場監督官や医師などの報告を数多く引用し、当時の工場労働が女性や子

どもの健康、家庭生活に与えた深刻な影響を明らかにしました。


7.婦人労働と家庭生活

女性が工場で長時間働くと、それまで家庭の中で女性が担わされてきた、

  • 炊事

  • 洗濯

  • 掃除

  • 授乳

  • 育児

  • 病人の世話

などの時間が失われます。

ここで注意したいのは、マルクスが「女性は家庭にいるべきだ」と主張しているわけで

はないということです。

問題は、家庭内の仕事を社会的に保障する仕組みがないまま、女性が低賃金・長時間の工

場労働へ強制的に組み込まれたことです。

つまり女性は、

工場での賃金労働と、家庭での家事・育児労働の両方を背負う

ことになります。

機械制工業は古い家族関係を壊す一方で、家事や育児を社会全体で支える新しい仕組みを

十分に作りませんでした。

その負担が女性と子どもへ集中したのです。


8.マルクスは婦人労働そのものに反対したのか

ここは誤解しやすいところです。

マルクスは、女性が家庭の外で働くことや、女性が社会的生産に参加すること自体を否定

しているのではありません。

女性が社会的な生産活動に参加することには、家庭内だけに閉じ込められていた古い家族

関係を変える可能性もあります。

しかし資本主義のもとでは、その可能性が、

  • 低賃金

  • 長時間労働

  • 健康破壊

  • 家事と仕事の二重負担

  • 子どもの放置

  • 家族全員の賃金労働化

という形で実現しました。

したがってマルクスの批判対象は、婦人労働そのものではなく、女性と子どもの労働力を

安価な搾取材料として利用する資本のあり方です。


9.機械が生み出した矛盾

機械には、本来、人間を重労働から解放する力があります。

ところが資本主義のもとでは、機械は次のような逆転を引き起こします。

機械の本来の可能性

資本主義のもとでの現実

労働を軽くする

より多くの人を働かせる

労働時間を短縮する

労働日を延長する

子どもに教育時間を与える

子どもを工場へ投入する

家族生活を豊かにする

家族全員を賃金労働者にする

生産力を人間のために使う

剰余価値の増大に利用する

ここにマルクスが明らかにした、機械制大工業の根本的な矛盾があります。

機械が悪いのではありません。
機械を誰が所有し、何の目的で使用するのかが問題なのです。


10.現代社会とのつながり

現在では、少なくとも多くの国で、19世紀のイギリスのような児童の長時間工場労働は

法律によって制限されています。

しかし、この節で示された問題の構造は、現代を考えるうえでも重要です。

たとえば、

  • 一人の賃金だけでは家族が生活できない

  • 夫婦が長時間働いても生活に余裕がない

  • 共働きでも家事や育児の負担が一方に集中する

  • 技術が進歩しているのに労働時間が十分に短くならない

  • 人手不足対策として安価な労働力ばかりが求められる

といった問題です。

これは本文からの現代的な読み取りですが、技術の進歩が自動的に労働者の幸福につなが

るわけではない、というマルクスの問題提起は今も有効です。技術によって生まれた余裕を

、企業の利益だけでなく、労働時間の短縮、賃金、教育、育児、休息へどう配分するかが問われます。


📝今回のまとめ

機械制工業は、筋力や熟練に依存する作業を減らし、女性や子どもも工場で働けるように

しました。

しかし資本は、それを労働者の解放ではなく、搾取できる労働力の範囲を広げるために利

用しました。

成人男性だけでなく、妻や子どもまで賃金労働者となり、家族全体が資本の支配下に組

み込まれます。

その結果、

  • 労働力の供給が増える

  • 一人当たりの賃金が低下する

  • 子どもの遊びや教育が奪われる

  • 女性の家事・育児負担が深刻になる

  • 家族全員が働かなければ生活できなくなる

という事態が生まれました。

マルクスが示した最大のポイントは、次の言葉にまとめられます。

人間の労働を軽くするはずの機械が、資本の手に握られると、より多くの人間を

資本に従属させる手段へ変わる。

機械の発達そのものではなく、機械を資本が所有し、剰余価値の獲得を目的として使用す

る社会関係に問題があるのです。

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