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2026年8月21日金曜日

 『資本論』再学習 第66回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第6扁労働賃金 第18章時間賃金について解説

 




📘『資本論』再学習 第66回

第1巻 第1冊「資本の生産過程」

第6篇「労働賃金」第18章「時間賃金」

第17章では、マルクスは**「労働力の価値・価格が、なぜ賃金という形で現れるのか」**を説明しました。

第18章「時間賃金」では、そこから一歩進んで、

労働者が「時間」を基準にして賃金を受け取る仕組みは、どのようなものなのか?

を分析します。


1.時間賃金とは何か?

時間賃金とは、簡単にいえば、

働いた時間に応じて賃金が決まる方式

です。

たとえば、

  • 1時間=1,500円
  • 1日8時間=12,000円
  • 1週間5日=60,000円

というような仕組みです。

現代でも、

時給 × 労働時間 = 賃金

という形は非常に身近ですね。

しかし、マルクスは単純に「時間給は便利な賃金制度だ」と考えるのではありません。

ここに資本家と労働者の関係を隠す仕組みがあると考えます。


2.「1時間いくら」と「1日の賃金」は違う

ここが第18章の重要ポイントです。

仮に、

1時間=1,000円

だとします。

8時間働けば、

1,000円 × 8時間=8,000円

です。

しかしマルクスが注目するのは、

「1時間=1,000円」という数字が、労働者にとって何を意味しているのか?

ということです。

労働者は「自分の労働そのものを売っている」ように見えます。

しかし、厳密にはそうではありません。

労働者が資本家に売っているのは、

労働する能力=労働力

です。


3.「労働力の価値」が「時間賃金」に変わる

ここまでの復習をすると理解しやすくなります。

労働者は資本家に労働力を売ります。

たとえば、労働力の1日の価値が、

8,000円

だったとしましょう。

そして労働時間が8時間なら、

8,000円 ÷ 8時間=1時間1,000円

となります。

つまり、

時間賃金は、労働力の価値を労働時間によって分割して表示したもの

と考えることができます。

ここが非常に重要です。


4.しかし「1時間1,000円」だけでは実態が分からない

たとえば、

「時給1,000円」

と聞くと、労働者は、

「1時間働けば1,000円の価値を生み出している」

と思いやすいでしょう。

しかし、マルクスはそうではないと考えます。

労働者が1時間の中で生み出す価値と、労働者が1時間について受け取る賃金は、同じものではありません。

ここで必要労働時間と剰余労働時間が重要になります。


5.必要労働時間と剰余労働時間

たとえば、8時間労働だとします。

仮に、

  • 必要労働時間=4時間
  • 剰余労働時間=4時間

だったとしましょう。

すると、

4時間+4時間=8時間

です。

イメージすると、

労働時間内容
4時間労働力の価値に相当する価値を生み出す
4時間資本家のための剰余価値を生み出す
合計8時間労働日の全体

となります。

ところが労働者には、

「8時間働いたから8時間分の賃金」

という形で賃金が支払われます。

そのため、

必要労働と剰余労働の区別が、賃金の表面では見えにくくなる

のです。


6.ここに「資本主義的な賃金の秘密」がある

これが第18章を理解するうえで、とても重要なところです。

労働者から見ると、

「8時間働いて、その8時間分の賃金をもらった」

ように見えます。

しかし資本家から見ると、

「労働力を購入し、それを8時間使用している」

という関係です。

そして、その8時間の中には、

労働力の価値を再生産するために必要な労働時間

だけでなく、

資本家のために剰余価値を生み出す時間

も含まれています。


7.時間賃金は「労働の価格」に見える

ここがマルクスの批判の核心です。

本当は、

労働力の価値 → 賃金

なのですが、

表面上は、

労働した時間 → その時間の価格

に見えます。

つまり、

本質

労働力を売る

表面

労働を売って、その時間に対して賃金を受け取る

という形になります。

この「見かけ」が、資本主義の賃金関係を分かりにくくします。


8.さらに重要なのが「労働時間の延長」

時間賃金では、もう一つ重要な問題があります。

仮に、

1時間=1,000円

なら、

8時間働けば8,000円。

10時間働けば10,000円。

12時間働けば12,000円。

となります。

すると資本家にとっては、

労働時間を延長すれば、その分だけ労働者に支払う賃金も増える

ことになります。

しかし、それだけではありません。

労働時間が延びれば、条件によっては剰余労働時間も増加する可能性があります。

したがって、

時間賃金は労働時間の延長と結びつきやすい

という問題が出てきます。


9.「時給が高い=必ず良い」とは限らない

ここも現代にもつながる面白いところです。

たとえば、

Aさん

時給1,500円
8時間労働

→ 12,000円

Bさん

時給1,800円
12時間労働

→ 21,600円

Bさんのほうが1日の賃金は高いですね。

しかし、

労働時間そのものが長い

という問題があります。

マルクスが見ているのは、

「いくらもらったか」だけではなく、その賃金を得るために、どれだけの時間を労働したのか

という点なのです。


10.時間賃金と「労働日の長さ」

第18章では、時間賃金によって、

労働日の長さと賃金額が直接結びつく

ことも重要です。

たとえば、

時給1,200円

なら、

8時間 → 9,600円
10時間 → 12,000円
12時間 → 14,400円

となります。

このため、労働者の賃金額を維持するために、長時間労働が必要になる場合もあります。

つまり、

時間賃金は、労働時間を「賃金の単位」に変える仕組み

ともいえます。


11.「低い時給」の危険性

マルクスが注目するもう一つの問題は、

時間賃金率を低く設定すること

です。

たとえば労働者が生活するために、

1日12,000円

必要だとします。

ところが時給が、

1,000円

なら、

12時間働かなければ12,000円になりません。

つまり、

賃金率が低い

必要な収入を得るため労働時間を延ばす

長時間労働

という関係が生まれます。

ここに時間賃金制度の問題があります。


12.第18章の重要な考え方

第18章を一言でまとめるなら、

時間賃金は、労働力の価値を「労働時間あたりの価格」という形で表したものである。

ということです。

そして、その表面的な形によって、

必要労働と剰余労働の関係が見えにくくなる

という点が重要です。


🧠 第18章を図式で理解する

労働力の売買

労働者

労働力を販売

資本家

労働力を一定時間使用

労働

その労働時間の中に、

必要労働時間 + 剰余労働時間

があります。

しかし賃金の表面では、

「1時間働けば○○円」

としか見えません。

ここに、

「労働力の価値」と「労働そのものの価値」の混同

が生じます。


📌 第17章から第18章への流れ

ここは再学習では特に大切です。

第17章

労働力の価値または価格の労働賃金への転化

「なぜ労働力の価値が賃金という形で現れるのか?」

第18章

時間賃金

「その賃金が、時間を基準にしてどのように表示されるのか?」

次の理解

賃金の形態によって、資本による労働者の搾取関係がどのように隠されるのか

という問題へ進んでいきます。


✍️ 今回の重要語句5つ

① 時間賃金
働いた時間を基準として支払われる賃金。

② 賃金率
一定の労働時間あたりの賃金。現代でいう「時給」に近いもの。

③ 労働力の価値
労働者が労働力を再生産するために必要な生活手段の価値。

④ 必要労働時間
労働力の価値に相当する価値を生み出すために必要な労働時間。

⑤ 剰余労働時間
労働者が自分の労働力の価値を超えて価値を生み出す時間。ここから剰余価値が生まれます。


🎯 第66回の核心

一番覚えておきたいのは、この一文です。

時間賃金は、「労働力の価値」を「労働時間あたりの賃金」という形で表すため、必要労働と剰余労働の関係を見えにくくする。

つまりマルクスは、単に「時給」という賃金制度を説明しているのではありません。

「なぜ労働者は、自分が生み出した価値と受け取る賃金の関係を、そのままでは理解しにくいのか」

という、資本主義の賃金関係の見かけと本質の違いを分析しているのです。

🌱 第66回を一言で

「時給」という分かりやすい形の裏側に、必要労働と剰余労働の関係が隠れている。

ここを押さえておけば、第19章の**「出来高賃金」**へ進んだときにも、かなり理解しやすくなります。

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