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2026年8月14日金曜日

『資本論』再学習 第60回 第1巻 第1冊「資本の生産過程」 第5篇 絶対的剰余価値と相対的剰余価値の生産第15章労働力の価格と剰余価値都の大きさの変動第1節労働日の大きさ及び労働の強度が不変で(与えられていて)労働の生産力が可変である場合について解説

 


📘『資本論』再学習 第60回

第1巻 第1冊「資本の生産過程」

第5篇 絶対的剰余価値と相対的剰余価値の生産

第15章 労働力の価格と剰余価値の大きさの変動

第1節 労働日の大きさと労働の強度が不変で、労働の生産力が可変である場合


今回の重要ポイント

✅ 労働日と労働の強度が同じなら、1日に新しく生み出される価値総額は変わらない
✅ 生産力が上昇すると、生活必需品が安くなり、労働力の価値が低下する
✅ 労働力の価値が低下すると、必要労働時間が短くなる
✅ その分だけ剰余労働時間が長くなり、剰余価値が増加する
✅ 生産力の上昇が剰余価値を増やすのは、労働力の価値を引き下げる場合である
✅ 労働力の価値と剰余価値は、一方が減れば他方が増える関係にある


1.この節でマルクスが検討する条件

第15章では、次の三つの要因が、労働力の価値と剰余価値をどのように変化させるかを分析します。

  1. 労働日の長さ

  2. 労働の強度

  3. 労働の生産力

第1節では、次の条件を設定します。

要因

状態

労働日の長さ

不変

労働の強度

不変

労働の生産力

可変

ここでいう「労働の強度」とは、一定時間内にどれほど集中して労働するかということです。

つまり、この節では、労働者が働く時間や仕事の密度は変えず、技術や機械、作業方法など

によって生産力だけが変化した場合を考えます。


2.労働の生産力とは何か

労働の生産力とは、一定時間内にどれだけ多くの商品を生産できるかを示すものです。

例えば、ある労働者が1時間で10個の商品を作っていたとします。新しい機械の導入によって

、同じ1時間で20個作れるようになれば、生産力は2倍になったことになります。

生産力上昇前:1時間 → 商品10個

生産力上昇後:1時間 → 商品20個

ただし、生産物の数が2倍になっても、労働者が1時間に生み出す新しい価値が2倍になるわけ

ではありません。


3.生産力が上昇しても、1日の価値生産物は変わらない

労働日と労働の強度が変わらなければ、労働者が1日に新しく生み出す価値の総額も変わり

ません。例えば、労働日を8時間、1時間に生み出す新価値を1,000円とします。

1時間の新価値 1,000円 × 8時間

=1日の価値生産物 8,000円

生産力が上昇して商品を多く作れるようになっても、労働時間が8時間のままなら、新しく生み

出される価値総額は8,000円のままです。

状態

生産物の量

1日の新価値

生産力上昇前

100個

8,000円

生産力上昇後

200個

8,000円

したがって、生産力が2倍になると、商品1個当たりに含まれる新価値は半分になります。

生産力の上昇

 ↓

同じ時間で生産される商品の量が増える

 ↓

商品1個当たりの価値が低下する

これが、この節を理解するための第一の原則です。


4.労働力の価値とは何か

労働力の価値は、労働者とその家族が生活し、労働力を再生産するために必要な生活手段の価

値によって決まります。

生活手段には、例えば次のようなものが含まれます。

  • 食料

  • 衣服

  • 住居

  • 光熱費

  • 教育費

  • 労働力を維持するためのその他の費用

労働力の価値は、簡単に表すと次のようになります。

労働力の価値

=労働者とその家族に必要な生活手段の価値

食料や衣服などを生産する部門で生産力が上昇すれば、それらの商品が安くなります。

その結果、労働者の生活に必要な商品の価値総額も小さくなり、労働力の価値が低下します。


5.生産力の上昇による基本的な変化

生産力が上昇した場合の流れは、次のようになります。

労働の生産力が上昇する

    ↓

生活必需品の価値が低下する

    ↓

労働力の価値が低下する

    ↓

必要労働時間が短くなる

    ↓

剰余労働時間が長くなる

    ↓

剰余価値が増加する

これが「相対的剰余価値」が増加する基本的な仕組みです。

労働日そのものを延長するのではなく、必要労働時間を短縮することで、剰余労働時間を相対的

に長くするのです。


6.必要労働時間と剰余労働時間

労働日は、次の二つに分けられます。

労働日=必要労働時間+剰余労働時間

必要労働時間

労働者が自分の労働力の価値、すなわち賃金に相当する価値を生み出す時間です。

剰余労働時間

必要労働時間を超えて、資本家のために無償で働く時間です。この時間に剰余価値が生み出されます。


7.数字を使った具体例

労働日を8時間、1日に生み出される新価値を8,000円とします。

生産力上昇前

労働力の価値が4,000円であれば、それを生産するために4時間必要です。

労働日8時間

=必要労働4時間+剰余労働4時間

項目

金額・時間

1日の新価値

8,000円

労働力の価値

4,000円

剰余価値

4,000円

必要労働時間

4時間

剰余労働時間

4時間

剰余価値率は次のようになります。

剰余価値率

=剰余価値÷労働力の価値×100

=4,000円÷4,000円×100

=100%

生産力上昇後

生活必需品が安くなり、労働力の価値が3,000円に低下したとします。

労働日は8時間、価値生産物は8,000円のままです。

労働日8時間

=必要労働3時間+剰余労働5時間

項目

金額・時間

1日の新価値

8,000円

労働力の価値

3,000円

剰余価値

5,000円

必要労働時間

3時間

剰余労働時間

5時間

剰余価値率は次のようになります。

剰余価値率

=5,000円÷3,000円×100

=約166.7%

変化の比較

項目

生産力上昇前

生産力上昇後

労働日

8時間

8時間

1日の新価値

8,000円

8,000円

労働力の価値

4,000円

3,000円

剰余価値

4,000円

5,000円

必要労働時間

4時間

3時間

剰余労働時間

4時間

5時間

剰余価値率

100%

約166.7%

労働日は長くなっていません。それでも必要労働時間が1時間短縮されたため、剰余労働時間が

1時間増えています。


8.マルクスが示した三つの法則

第1の法則

労働日と労働の強度が不変ならば、1日に生産される価値総額も不変です。

労働日の長さが不変

+労働の強度が不変

    ↓

1日の価値生産物は不変

ただし、生産力の変化によって生産される商品の量は変化します。


第2の法則

労働力の価値と剰余価値は、反対方向に変化します。

労働力の価値が低下

    ↓

剰余価値が増加

反対に、生産力が低下して生活必需品が高くなれば、労働力の価値は上昇し、剰余価値は減少

します。

労働力の価値+剰余価値

=1日の価値生産物

1日の価値生産物が一定である以上、一方が減れば、もう一方が増えるのです。


第3の法則

剰余価値が変化するためには、まず労働力の価値が変化しなければなりません。

生産力の変化

 ↓

労働力の価値の変化

 ↓

剰余価値の変化

生産力が上昇しただけで、自動的に剰余価値が増えるわけではありません。

その生産力上昇が、労働者の生活必需品、またはその生産に必要な生産手段を安くし、労働力の

価値を引き下げる必要があります。


9.どの部門の生産力上昇でもよいわけではない

生産力が上昇しても、その商品が労働者の生活に関係しなければ、労働力の価値は直接には低下

しません。

労働力の価値を低下させやすい部門

  • 食料品

  • 衣料品

  • 住宅関連

  • 交通

  • 光熱

  • 生活必需品の生産に使われる機械や原材料

直接には低下させない部門

  • 高級宝石

  • 豪華ヨット

  • 富裕層向けのぜいたく品

  • 労働者が通常消費しない商品

例えば、高級宝石を生産する技術が向上して宝石が安くなっても、労働者の基本的な生活費が

下がらなければ、労働力の価値は基本的に変わりません。

したがって、社会全体の生産力上昇と、剰余価値の増加を単純に同一視することはできません。


10.生産力が低下した場合

凶作などによって食料生産の生産力が低下すると、食料品の価値が上昇します。

生産力が低下する

    ↓

生活必需品の価値が上昇する

    ↓

労働力の価値が上昇する

    ↓

必要労働時間が長くなる

    ↓

剰余労働時間が短くなる

    ↓

剰余価値が減少する

8時間労働を例にすると、次のようになります。

生産力低下前

必要労働4時間|剰余労働4時間


生産力低下後

必要労働5時間|剰余労働3時間

労働日が同じ8時間であっても、労働力の価値が上昇したため、資本家が取得する剰余価値は

減少します。


11.労働力の価値と賃金は同じではない

ここで注意したいのは、「労働力の価値」と「実際に支払われる賃金」は必ずしも一致しないと

いうことです。

労働力の価値が低下した場合、賃金が労働力の価値と同じ割合で直ちに下がるとは限りません。

例えば、生活必需品の価値が4,000円から3,000円に下がったとしても、賃金が4,000円から3,500円

までしか下がらない場合があります。

項目

生産力上昇前

生産力上昇後

労働力の価値

4,000円

3,000円

実際の賃金

4,000円

3,500円

労働者の実質的な状態

基準

改善する可能性

資本家の剰余価値

4,000円

4,500円

この場合、労働者の実質的な生活状態が多少改善すると同時に、資本家の剰余価値も増える可能

性があります。

生産力の上昇によって新たに生まれた余地が、労働者と資本家の間でどのように分けられるかは、

両者の力関係や労働運動などによって左右されます。


12.古典派経済学に対するマルクスの批判

古典派経済学者のリカードは、労働の生産力、賃金、利潤の関係を研究しました。

しかしマルクスは、リカードには次のような問題があったと指摘します。

  • 労働力の価値と賃金を十分に区別していない

  • 剰余価値と利潤を同じものとして扱う傾向がある

  • 剰余価値の変化を、労働力の価値との関係から十分に説明できていない

マルクスは、商品の価値を「賃金と利潤の足し算」で説明するのではなく、労働者が生み出し

た新価値が、労働力の価値と剰余価値に分割されると考えました。

労働者が生み出した新価値

    ↓

┌──────────┬──────────┐

│ 労働力の価値 │ 剰余価値  │

│  賃金の基礎  │ 資本家が取得 │

└──────────┴──────────┘


13.この節と相対的剰余価値の関係

この節は、第14章までに学んだ「相対的剰余価値」の仕組みを、より厳密に示したものです。

絶対的剰余価値

労働日そのものを延長する

8時間 → 10時間

相対的剰余価値

労働日は8時間のまま

必要労働時間を短縮する

4時間 → 3時間

相対的剰余価値の生産では、労働者が以前より長く働かなくても、資本家が取得する剰余価値を

増やすことができます。


14.全体の関係をコピーできる図表で整理

【前提条件】


労働日   =不変

労働の強度 =不変

労働の生産力=上昇


      ↓


【商品の変化】


同じ時間で、より多くの商品を生産できる


      ↓


商品1個当たりの価値が低下する


      ↓


【生活必需品の変化】


労働者の生活必需品が安くなる


      ↓


労働力の価値が低下する


      ↓


【労働日の分割の変化】


必要労働時間が短縮される

剰余労働時間が延長される


      ↓


【最終的な結果】


労働力の価値 =減少

剰余価値   =増加

剰余価値率  =上昇

1日の新価値  =不変


まとめ

第15章第1節で最も重要なのは、労働の生産力が「商品の量」だけでなく、労働日の内部におけ

る必要労働と剰余労働の配分を変えるという点です。

生産力が上昇すると、同じ時間で多くの商品を作れるようになります。しかし、労働日と労働の

強度が同じなら、1日に生み出される新価値の総額は変わりません。

変わるのは、その新価値の分け方です。

生産力上昇前

労働力の価値 4,000円+剰余価値4,000円

=新価値8,000円


生産力上昇後

労働力の価値 3,000円+剰余価値5,000円

=新価値8,000円

つまり、生産力の上昇によって労働力の価値が低下すれば、必要労働時間が短くなり、同じ労

働日の中で剰余労働時間が長くなります。

これが相対的剰余価値の増加です。

生産力の発展は、それ自体で労働日を長くするのではなく、労働日の内部を資本に有利な

形に組み替える。

この点に、資本主義における生産力発展の特徴が表れています。


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