『資本論』第1巻の大きな転換点です。
📘『資本論』再学習 第65回
第1巻 第1冊「資本の生産過程」
第6篇「労働賃金」
第17章「労働力の価値または価格の労働賃金への転化」
1.第17章は何を説明しているのか?
第16章までで、マルクスは基本的に、
労働力の価値と労働賃金は同じものではない
ということを明らかにしてきました。
ところが、現実の社会を見ると、労働者は、
「1日8時間働いたから、その8時間分の労働に対して給料をもらう」
と考えやすい。
ここにマルクスが問題にする**「見かけ」**があります。
実際には資本家が買っているのは、
労働そのものではなく「労働力」
です。
ところが、労働者には、
「自分の労働に対して賃金を受け取っている」
ように見える。
第17章では、この仕組みを詳しく説明します。
2.「労働力」と「労働」を区別する
ここが今回の最重要ポイントです。
労働力
労働者が持っている、
働く能力
です。
たとえば、
体力
技術
知識
経験
頭脳
熟練
などを使って仕事をする能力です。
労働
実際に工場や会社で、
労働力を使って仕事をすること
です。
つまり、
労働力=働く能力
労働=その能力を実際に使うこと
です。
3.資本家が買うのは「労働」ではない
資本家と労働者の関係を単純化すると、
労働者
↓
労働力を商品として売る
資本家
↓
労働力を買う
という関係です。
そして資本家は、その労働力を一定時間使用します。
例えば、
1日8時間働いてもらう
という契約です。
ここで重要なのは、
労働力の価値=労働力を再生産するために必要な生活手段の価値
だということです。
つまり、
食料・衣服・住居など、労働者が生活し、翌日も働けるようにするための費用が基礎になります。
4.では、なぜ「労働に対する賃金」に見えるのか?
ここが第17章の核心です。
例えば、
労働者が8時間働いて、
1日1万円
の賃金を受け取ったとします。
労働者から見ると、
「8時間働いたから1万円もらった」
と考えるのが自然です。
しかしマルクスは、
1万円は8時間の労働そのものの価値ではない
と考えます。
資本家が支払ったのは、
労働力の1日分の価値
です。
5.「必要労働」と「剰余労働」
ここで、これまで学習してきた剰余価値につながります。
例えば、
労働者が1日8時間働くとします。
仮に、
前半4時間
労働者自身の労働力の価値に相当する価値を生み出す。
これを
必要労働
と呼びます。
後半4時間
それを超えて価値を生み出す。
これが
剰余労働
です。
イメージすると、
8時間の労働
├── 4時間 → 必要労働
└── 4時間 → 剰余労働
となります。
資本家は、この後半の剰余労働によって剰余価値を取得します。
6.それなのに「8時間全部に賃金を払った」ように見える
ここが非常に面白いところです。
資本主義では、
「8時間働いたから、その8時間全部に対して賃金を払った」
ように見えます。
しかし、マルクスの分析では違います。
労働者が受け取る賃金は、
8時間の労働そのものの価値
ではなく、
労働力の価値
を貨幣で表したものです。
だから、
賃金という形になることで、必要労働と剰余労働の区別が見えにくくなる
のです。
7.これが「資本主義の秘密」を隠す
ここは第17章を理解するうえで非常に重要です。
資本主義では、
労働力の売買
が行われています。
しかし、賃金という形になると、
「労働の全部が支払われている」
ように見えます。
すると、
「資本家は労働者から剰余労働を取得している」
という関係が表面から見えにくくなります。
つまり、
実際の関係
労働力の価値 → 賃金
労働力の使用 → 8時間の労働
必要労働+剰余労働 → 新しい価値
なのですが、
表面上は
8時間働く → その8時間に対して賃金を受け取る
ように見えるわけです。
8.「労働力の価値」と「労働の価値」は違う
ここを表にすると非常に分かりやすいです。
項目 内容
労働力 労働者が持つ働く能力
労働力の価値 労働力を再生産するために必要な価値
労働 労働力を実際に使用すること
賃金 労働力の価値または価格が貨幣で表されたもの
必要労働 労働者自身の労働力の価値に相当する価値を生み出す部分
剰余労働 それを超えて行われる労働
剰余価値 剰余労働によって生み出される価値
9.具体例で考えてみよう
例えば、
1日の賃金=8,000円
だったとします。
労働者は、
8時間労働
します。
仮に、
4時間の必要労働
で8,000円分の価値を生産できるとしましょう。
すると、
4時間
8,000円分
↓
労働力の価値に相当
残り4時間
さらに8,000円分の価値を生産
となります。
すると、
労働者が生み出した価値=16,000円
資本家が支払った賃金=8,000円
差額の
8,000円
が剰余価値になります。
もちろん、これは理解のための単純化した例です。
10.「賃金」は何を隠しているのか?
マルクスが注目しているのはここです。
賃金という形では、
必要労働と剰余労働との関係が消えてしまったように見える
のです。
例えば、
「時給1,500円」
と表示されていると、
1時間働いたから1,500円の価値を受け取った
ように感じます。
しかしマルクスの分析では、
労働者が1時間で生み出す価値
と
労働力の1時間分の価値
は別問題です。
ここを混同してはいけません。
11.第6篇「労働賃金」の目的
第1巻前半では、
価値 → 剰余価値 → 労働力 → 資本の生産過程
という仕組みを分析してきました。
そして第6篇に入ると、
「では、労働者が実際に受け取る賃金はどう見えるのか?」
という問題に進みます。
つまり、
第1段階
労働力は商品である。
↓
第2段階
労働力には価値がある。
↓
第3段階
労働力を使用すると労働が行われる。
↓
第4段階
労働によって新しい価値が生まれる。
↓
第5段階
必要労働を超える部分が剰余労働になる。
↓
第6段階
しかし、賃金という形では**「労働全部が支払われた」ように見える。**
これを説明するのが第17章です。
12.第17章の核心を一言でいうと
私は今回の章を次のように覚えると分かりやすいと思います。
「賃金は労働の価格に見えるが、実際には労働力の価値または価格の貨幣的表現である。」
これが第17章の中心です。
🧠 第65回の重要ポイント5つ
① 資本家が買うのは労働ではなく労働力
② 労働力=働く能力
③ 労働=労働力を実際に使用すること
④ 賃金は労働力の価値または価格の貨幣的表現
⑤ 賃金という形によって、必要労働と剰余労働の関係が見えにくくなる
🔗 第64回から第65回へのつながり
第64回で学んだ剰余価値率を思い出してください。
剰余価値率=剰余労働 ÷ 必要労働
でした。
第65回では、
「その必要労働と剰余労働が、なぜ賃金という形になると見えなくなるのか?」
を考えています。
つまり、
第64回=剰余価値がどのように生まれるか
↓
第65回=その仕組みが賃金によってどのように覆い隠されるか
という流れです。
ここがつながると、『資本論』の理解がかなり深まります。
次回は、この第17章について中学生でも解けるくらいのやさしい確認問題→回答→解説の形で復習すると、かなり定着しやすいです。
📘『資本論』再学習 第65回
第1巻 第1冊「資本の生産過程」
第6篇「労働賃金」
第17章「労働力の価値または価格の労働賃金への転化」漫画風イラストを描いてください横長
編集

0 件のコメント:
コメントを投稿