資本論 第1巻
第3篇「絶対的剰余価値の生産」
第8章「労働日」第4節・第5節のポイント解説
マルクスはここで、資本がどのように労働日を延長し、絶対的剰余価値を
生み出してきたか、そしてそれに対抗する労働時間制限の歴史的闘争を、
1833年〜1864年のイギリス工場立法を例に詳細に分析しています。
第4節:昼間労働および夜間労働・交替制
1. 問題の核心
産業革命期のイギリスでは、機械制大工業の発展により、
1日14〜16時間労働
子ども・女性の深夜労働
交替制による「24時間稼働」
が常態化しました。
資本にとっては
👉 機械を止めないこと=利潤最大化
そのため昼夜交替制を導入し、労働者を「機械の付属物」として扱ったと
マルクスは批判します。
2. 昼夜交替制の仕組み
2組の労働者を交替させる
名目上は労働時間短縮でも
実際は断続的な長時間拘束
とくに少年・少女労働者が深夜に酷使され、健康破壊・死亡率上昇が問題
となりました。
マルクスは工場監督官報告書を大量に引用し、
資本は法律の抜け道を探して労働時間を延ばそうとすると述べます。
第5節:標準労働日のための闘争
― 労働時間の強制的制限(1833–1864年)
ここが本章の歴史的クライマックスです。
マルクスは、労働日の長さは「自然法則」ではなく、階級闘争の結果で決
まると論じます。
① 背景:無制限労働
産業革命初期:
子ども:1日15時間
夜間労働あり
休憩なし
労働力の急速な消耗が社会問題化しました。
② 1833年 工場法(Factory Act)
Factory Act 1833
内容
9歳未満の就労禁止
9〜13歳:1日8時間
13〜18歳:1日12時間
夜間労働禁止(18歳未満)
国家工場監督官の設置
👉 初めて国家が工場内部に介入
マルクスはこれを
「国家による資本への最初の本格的干渉」
と位置づけます。
③ 1844年 工場法
Factory Act 1844
女性の労働時間を12時間に制限
機械の安全規定
女性労働保護=実質的に成年男性労働時間も間接的に制限。
④ 1847年 十時間法
Ten Hours Act 1847
女性・少年の労働時間を1日10時間に制限
これは労働者階級の大きな勝利。
しかし資本家は
交替制の抜け道
食事時間操作
計算上の分割
などで対抗しました。
マルクスはこれを
「法律と資本の内戦」
と描写します。
⑤ 1850年改正
労働時間を「午前6時〜午後6時」に固定
実質的な10時間制確立
これにより昼夜交替制の濫用が抑制されました。
⑥ 1864年以降
工場法は繊維産業以外にも拡張され、
陶器・火薬・マッチ工場などへ適用。
👉 労働時間制限が社会的原理として拡大。
マルクスの理論的結論
1. 労働日には「自然的限界」がある
人間は無限に働けない。
2. しかし資本は無限延長を志向する
価値増殖運動の論理上そうなる。
3. だから労働日は
「資本と労働の力関係」で決まる
標準労働日は
道徳や人道の産物ではなく、階級闘争の成果である。
絶対的剰余価値との関係
絶対的剰余価値=
👉 労働日延長による剰余労働時間の増大
工場立法はこれを制限した。
その結果、資本は次の段階へ移行:
▶ 相対的剰余価値の生産
(技術革新・生産性向上)
まとめ図式
マルクスの有名な一節
「資本は労働者の生活時間を盗む」
この章は
資本主義における時間の支配の歴史的分析です。
・当時の労働者運動(チャーティスト運動)との関係
チャーティスト運動 と工場立法の関係
――『資本論』第1巻第8章との接点
マルクスが第8章で描く「標準労働日のための闘争」は、単なる工場内の
問題ではなく、イギリスの働者階級の政治運動と深く結びついていました。その中心がチャーティスト運動です。
1. チャーティスト運動とは何か
1838年に「人民憲章(People’s Charter)」を掲げて始まった、イギリス初の
大規模労働者政治運動。
主な要求(6か条)
普通選挙(成人男子)
秘密投票
議員への報酬
均等選挙区
財産資格の廃止
毎年選挙
👉 核心は「政治的民主化」
マルクスは、これを
労働者階級が自ら歴史の主体として登場した最初の運動
と評価します。
2. なぜ政治運動が労働時間問題と結びついたのか?
当時の状況:
労働日14〜16時間
子ども・女性の酷使
選挙権なし
労働者は気づきます:
「議会に代表を持たなければ、労働時間は制限できない」
つまり
労働時間問題 → 国家権力の問題
これが重要です。
3. 十時間法とチャーティスト
Ten Hours Act 1847
1847年の十時間法は、単なる道徳的改革ではありません。
実際には:
チャーティストの大衆集会
ストライキ
署名運動(数百万規模)
の圧力が背景にありました。
とくに1842年のゼネスト(Plug Plot Riots)は、
賃下げと政治的権利要求が結合した運動でした。
4. マルクスの見解(『資本論』第8章)
マルクスは、標準労働日の確立を
「長期にわたる、多少隠れた内戦」
と呼びます。
この「内戦」とは:
資本家階級 vs 労働者階級
工場内の闘争
議会内の闘争
街頭運動
すべてを含みます。
チャーティズムはその政治的形態でした。
5. 階級闘争の構図
資本は「自由な契約」と言いますが、
マルクスは指摘します:
労働者は生活のために売らざるを得ない
だから「自由」は形式的である
チャーティスト
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