資本論 第2巻「資本の流通過程」第3篇「社会的総資本の再生産と流通」
第20章「単純再生産」第11節「固定資本の補填」の要点解説です。
(①貨幣形態での摩損価値補填/②現物補填/③結論)
■ 前提:ここでのテーマは何か
固定資本(機械・建物など)は一度に消費されず、徐々に摩耗する。
しかし再生産では最終的にそれを**丸ごと更新(取り替え)**しなければならない。
→ では社会全体として
摩耗分はどう回収され、どうやって新しい固定資本に置き換えられるのか?
これをマルクスは分析しています。
① 貨幣形態における摩損価値部分の補填
● 内容の核心
固定資本は使用されるたびに価値の一部が商品へ移転する。
この移転分は商品の販売を通じて貨幣として回収される。
👉 しかしここが重要:
回収された貨幣はすぐに新しい機械の購入に使われるわけではない
● なぜか?
固定資本は耐用年数が長いから。
例:
機械の寿命:10年
毎年 1/10 の価値が商品に移転
その都度、貨幣として蓄積される
→ 10年後にまとめて新機械を購入
● 社会的に見ると
社会の各企業が異なる時期に機械を更新するため:
ある企業:貨幣を貯めている段階
別の企業:実際に新設備を購入する段階
👉 これにより社会全体では循環が成立する
● ポイント
✔ 摩耗価値はまず貨幣として保存される(償却積立)
✔ すぐには現物再生産に入らない
✔ 固定資本の特殊な回転形態
② 固定資本の現物補填(実物での更新)
ここが理論上もっとも重要です。
● 問題設定
社会全体として古い機械が更新されるためには:
同時に新しい機械が生産されていなければならない
つまり:
👉 貨幣だけあってもダメ
👉 生産手段部門が現物を供給する必要がある
● 部門構成(再生産図式)
マルクスは社会を2部門に分ける:
第I部門:生産手段(機械・原料など)
第II部門:消費手段
固定資本の更新は主に:
👉 第I部門の産物
● 重要な論点
固定資本は「一度に大量に更新」される。
そのため:
第I部門は毎年一定量の更新用設備を生産しておく必要
社会全体で更新時期が分散していることで均衡が保たれる
● もしズレが生じると?
更新が集中 → 設備不足
更新が少ない → 過剰生産
👉 景気変動の原因にもなる
③ 結論(マルクスの最終ポイント)
マルクスが示す核心は次の通り:
◆ 1.固定資本は特別な回転をする
流動資本と違い:
👉 再生産理論では別扱いが必要
◆ 2.摩耗価値は貨幣として蓄積される
これは単なる収入ではなく:
👉 将来の設備更新のための準備金
◆ 3.現物補填は社会的条件に依存する
個々の企業の問題ではない:
社会全体で必要な量の生産手段が作られているか
◆ 4.単純再生産でも複雑な均衡が必要
単純再生産=規模不変でも:
固定資本更新
部門間交換
時間的ズレ
👉 高度な社会的調整が必要
■ この節の理論的重要性
この部分は現代経済にも非常に重要です。
● 景気循環の説明
設備更新の波が:
👉 好況・不況を生む要因になる
● 減価償却の理論的基礎
企業会計の「減価償却」は
まさにここで説明されている現象。
● マクロ経済との関係
投資需要
設備投資サイクル
資本ストック更新
■ 超要約(試験・レポート用)
固定資本は徐々に価値を移転し、その価値は貨幣として蓄積された後、耐用期間終了
時に現物として補填される。この更新は社会全体での生産手段供給に依存し、
単純再生産においても部門間の均衡が不可欠である。
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