『
資本論 第2巻 第17章
第1節「単純再生産」の解説
カール・マルクスの『資本論』第2巻は、資本の流通過程を扱う巻であり、第17章では「剰余価値が社会
全体でどのように流通するか」を分析します。
その第1節が 「単純再生産」 です。
ここでは、資本主義社会が毎年同じ規模で繰り返される仕組みを理論的に説明しています。
1 単純再生産とは何か
**単純再生産(simple reproduction)**とは
生産規模が拡大せず、前年と同じ規模で社会の生産が繰り返される状態
つまり
資本家は 剰余価値をすべて消費する
資本の蓄積(拡大投資)を行わない
という前提です。
図式的にはこうです。
生産 → 商品 → 販売 → 貨幣 → 再び同じ規模で生産
資本の循環
M → C → P → C' → M'
貨幣 商品 生産 商品' 貨幣'
しかし M' − M = 剰余価値 は
資本として再投資されず 資本家の消費になります。
2 再生産とは社会の再生産である
マルクスが重要視するのはここです。
単なる商品の再生産ではなく
社会関係の再生産
が起きています。
単純再生産では毎年次の関係が再生産されます。
つまり
資本主義そのものが再生産される
ということです。
3 労働者の賃金の意味
マルクスはここで重要な指摘をします。
労働者が受け取る賃金は
資本家が与えるものではない
という点です。
なぜかというと
労働者は生産の中で
自分の賃金以上の価値を作るその一部が 賃金として戻るだけ
つまり
労働者が作った価値
↓
一部 = 賃金
残り = 剰余価値
したがって
賃金は実質的には
労働者自身の生産物の一部
なのです。
4 資本の見かけの起源
単純再生産の分析からマルクスは
資本の起源の幻想
を批判します。
表面的には
資本家 → 賃金を前払い
労働者 → 労働
ですが実際には
労働者の過去の労働
↓
資本の形成
↓
資本が労働者を雇う
つまり
資本は過去の労働の蓄積です。
しかし資本主義では
「資本が労働を生み出す」
ように見えてしまう。
マルクスはこれを
資本主義的錯覚
と説明します。
5 単純再生産で明らかになること
単純再生産の分析によって
次の本質が見えます。
① 資本主義は毎年再生産される
生産だけでなく
資本家
労働者
支配関係
が再生産される。
② 賃金は資本家の「恩恵」ではない
賃金は
労働者が作った価値の一部
にすぎない。
③ 資本は労働に依存する
資本の源泉は
労働
である。
6 次の節(拡大再生産)への準備
第17章の次の議論では
拡大再生産
つまり
剰余価値 → 再投資 → 資本蓄積
が扱われます。
単純再生産はそのための
理論的出発点
です。
まとめ(超要点)
単純再生産とは
剰余価値を資本家が消費し、生産が同じ規模で繰り返される状態
しかしその過程で
労働者階級
資本家階級
搾取関係
が 毎年再生産される。
つまり
資本主義は生産と同時に社会関係を再生産する
これがマルクスの核心です。
0 件のコメント:
コメントを投稿