資本論 第2巻
第2篇 資本の回転
第16章 可変資本の回転
第1節 剰余価値の年率
この節では、カール・マルクス が 「可変資本(労働力に支払う賃金)」が1年間に何回回転するかによって、
資本家が得る剰余価値の年率が変わることを説明しています。
ポイントは 回転速度と剰余価値率の関係です。
1. まず用語の整理
マルクスは次の区別をします。
重要なのは
**「一年間で何回資本が回転するか」**です。
2. 剰余価値率と剰余価値の年率は違う
マルクスはここで 二つの率を区別します。
(1) 実際の剰余価値率
1回の生産過程での搾取率
例
賃金 100
剰余価値 100
剰余価値率
𝑚/𝑣=100/100=100%
m/v=100/100=100%
これは 労働日の内部の関係です。
(2) 剰余価値の年率
これは 1年間に資本家がどれだけ剰余価値を得るか。
式
𝑀′=𝑚′×𝑛
M
′
=m
′
×n
3. 回転が早いほど剰余価値は増える
例1(年1回回転)
可変資本
100
剰余価値率
100%
回転
1回
年間剰余価値
100
年率
100%
例2(年10回回転)
可変資本
100
剰余価値率
100%
回転
10回
年間剰余価値
100 × 10 = 1000
年率
1000%
結論
同じ労働搾取でも
回転が速い資本の方が剰余価値は大きくなる
4. なぜこうなるのか
理由は単純です。
資本家は 同じ可変資本を何度も使えるからです。
例
1週間で商品が売れる場合
賃金100
→商品販売
→また賃金100
→また生産
この繰り返しで
同じ資本で何回も搾取できる
5. マルクスの重要な指摘
ここでマルクスは重要なことを言います。
資本家が前貸ししている可変資本は、実際に1年間に支払う賃金総額より小さいことがある。
理由
回転して戻るから。
例
週払い賃金100
年52週
実際賃金
5200
しかし前貸し資本
100だけで足りる。
6. だから年率は非常に高く見える
年率の式
𝑀′=𝑚′×𝑛
M
′
=m
′
×n
例えば
m' = 100%
n = 52
𝑀′=5200%
M
′
=5200%
つまり
資本の回転が速いほど年率は爆発的に上がる
7. この節の理論的な意味
マルクスの狙いはここです。
資本主義では
搾取の大きさは
労働日の長さだけでなく
資本の回転速度
にも依存する。
つまり
資本主義の競争では
流通の高速化
在庫削減
輸送の高速化
が重要になります。
8. 現代的な例
Amazonのような企業
在庫回転が速い
キャッシュ回収が速い
→同じ資本で
何度も利益を生む
これは
マルクスの回転論の典型例です。
まとめ(この節の核心)
この節の要点は3つです。
① 剰余価値率と剰余価値年率は違う
② 年率は
剰余価値率 × 年間回転数
③ 回転が速い資本ほど
同じ搾取率でも多くの剰余価値を生む
第16章全体の構造
ここでは、資本論 第2巻「資本の流通過程」の
第16章 可変資本の回転の 全体構造を整理します。
著者は カール・マルクス です。
この章は 資本の回転の理論の中核であり、
特に 剰余価値率と資本回転の関係を明確にする章です。
第16章 可変資本の回転 ― 全体構造
第16章は 3つの節で構成されています。
つまり構造は
①理論 → ②個別資本 → ③社会全体
という拡張構造です。
第1節 剰余価値の年率
(理論の出発点)
ここでマルクスは次の式を示します。
𝑀′=𝑚′×𝑛
M
′
=m
′
×n
核心
回転が速いほど資本家の年間剰余価値は増える。
つまり搾取の強さは
労働日の長さ
労働強度
だけでなく
資本回転速度
にも依存します。
第2節 個々の可変資本の回転
ここではマルクスは
前貸し資本と年間賃金総額の違いを説明します。
例
労働者への賃金
週100
年間賃金
5200
しかし資本家が前貸しする可変資本
100
理由
資本が回転して戻るからです。
つまり
同じ資本を何度も使える
ということです。
この節の結論
回転速度が速いほど少ない資本で多くの労働を動員できる
第3節 社会的総可変資本の回転
ここでは視点が
個別資本 → 社会全体
に移ります。
マルクスは
社会全体の賃金支払と可変資本について考えます。
ポイントは
社会では
資本が同時に回転している
回転時期がずれている
という点です。
そのため
社会の年間賃金総額は
実際に前貸しされている可変資本より大きくなる。
第16章の論理の流れ
章の論理は次の順序です。
① 剰余価値年率の理論
↓
② 個々の資本の回転分析
↓
③ 社会全体の可変資本
つまり
ミクロ → マクロ
の構造になっています。
第16章の理論的な意味
この章は資本論全体の中で非常に重要です。
理由は
資本主義の利潤は回転速度に依存する
という点を示すからです。
資本主義の競争では
輸送
流通
在庫
決済
が高速化されます。
これは
資本回転を速めるため
です。
第16章の位置(第2巻の中で)
第2巻の構造は次です。
第16章は
第2篇の核心部分です。
ここで
回転理論 → 利潤率理論
への橋が作られます。
(第3巻につながる)
第16章がなぜ資本論で最も難しい章の一つなのか
4
ここでは、資本論 第2巻
**第16章「可変資本の回転」**が、なぜ研究者の間でも
『資本論』の中で特に難しい章の一つとされるのかを説明します。
著者は カール・マルクス です。
結論から言うと、難しい理由は 5つの理論的ポイントが同時に扱われるからです。
1. 「剰余価値率」と「剰余価値の年率」を区別する必要がある
多くの読者が最初に混乱するのはここです。
マルクスは 二つの率を区別します。
式
𝑀′=𝑚′×𝑛
M
′
=m
′
×n
𝑚′
m
′
= 剰余価値率
𝑛
n = 年間回転数
つまり
搾取率が同じでも回転が速いと年率は大きくなる。
この 二重の率の概念が理解を難しくします。
2. 「前貸資本」と「年間支出」の区別
通常の感覚では
資本家が払う賃金 = 必要な資本
と思います。
しかしマルクスは違うと言います。
例
週賃金 100
年間賃金 5200
しかし資本家が必要な可変資本
100だけ
理由
資本が回転するからです。
つまり
実際に使われる資本と
年間に支払われる総額が違う
この発想が直感に反します。
3. 時間の問題(回転時間)
第16章では
時間構造
が理論の中心になります。
資本には
回転数は
𝑛=1年回転時間
n=
回転時間
1年
になります。
つまり
時間が経済理論の核心になる
これが第2巻特有の難しさです。
4. 個別資本と社会的資本の視点の切替
第16章では視点が頻繁に変わります。
個別資本
社会総資本
例えば
個別資本では回転が連続する
社会では回転が重なり合う
この視点転換が読みにくさを生みます。
5. 第3巻への橋渡しになっている
この章は実は
利潤率理論への準備です。
後に第3巻で
利潤率=剰余価値総資本
利潤率=
総資本
剰余価値
が出てきます。
しかし
剰余価値は
回転速度に依存する
ので
第16章の理論が必要になります。
つまり
この章は
第1巻(搾取理論)
第3巻(利潤率理論)
をつなぐ章です。
まとめ
第16章が難しい理由は次の5つです。
剰余価値率と年率の区別
前貸資本と年間支出の区別
回転時間という時間理論
個別資本と社会資本の視点転換
第3巻の利潤率理論への橋渡し
そのためこの章は
第2巻の理論的核心
とよく言われます。
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