資本論 第2巻・第3篇(社会的総資本の再生産と流通)第20章「単純再生産」のうち、
**第12節「貨幣材料の再生産」**と
**第13節「デステュット・ドゥ・トラシの再生産論」**の要点解説です。
(数式よりも論理構造が重要なので、概念中心に説明します)
◆ 前提:単純再生産とは何か
まず全体の位置づけです。
単純再生産
= 生産規模が拡大も縮小もせず、前年と同じ規模で繰り返される再生産。
社会は2部門に分かれます:
第Ⅰ部門:生産手段(機械・原料など)を生産
第Ⅱ部門:消費手段(食料・衣服など)を生産
この2部門の交換が整合しないと、社会全体は再生産できません。
第12節:貨幣材料の再生産
◆ 問題の所在
これまでの分析では、貨幣は単なる媒介として扱われていました。
しかし現実には:
👉 貨幣そのもの(当時は金)が生産される商品でもある
では:
社会はどのようにして、流通に必要な貨幣(金)を供給し続けるのか?
これがこの節のテーマです。
◆ 金(貨幣材料)も第Ⅰ部門に属する
金は消費されるものではなく:
👉 生産や流通を可能にする素材
👉 富の保存手段
👉 貨幣
したがって:
金生産は第Ⅰ部門(生産手段部門)に属する
◆ 金生産の特殊性
通常の商品:
生産 → 販売 → 貨幣を得る
金の場合:
生産 → そのまま貨幣になる
つまり:
👉 販売せずとも貨幣を直接得る
◆ なぜ金の再生産が必要か
流通には常に一定量の貨幣が必要。
さらに:
摩耗
退蔵
国際流出
蓄蔵
などで貨幣量は減少する。
したがって:
👉 社会は新しい貨幣を補充し続ける必要がある
◆ 単純再生産の中での役割
金生産部門は:
労働者に賃金を払う(=貨幣を供給)
他部門から消費手段を購入
他部門の交換を媒介する貨幣を供給
つまり:
👉 社会の血液としての貨幣を供給する部門
◆ マルクスの重要な洞察
貨幣は外部から与えられるのではない。
👉 社会内部で生産される
これにより:
再生産過程は完全に閉じた体系になる
第13節:デステュット・ドゥ・トラシの再生産論
◆ 誰か
アントワーヌ・ルイ・クロード・デステュット・ド・トラシ
(フランスの観念学派の経済思想家)
古典派の一部に属しますが、マルクスは彼を批判的に扱います。
◆ 彼の基本的主張
トラシの再生産観:
👉 すべての収入は最終的に消費に向かう
👉 供給は需要を自動的に生む
要するに:
市場は常に均衡する
これは:
👉 セイ法則(供給が自ら需要を作る)に近い
◆ マルクスの批判の核心
① 生産と消費を同一視している
トラシ:
生産されたものは必ず誰かの所得となり、消費される
マルクス:
👉 再生産には「資本の更新」が必要
👉 全部が消費されるわけではない
② 資本家の消費と資本補填の区別がない
生産物の価値は:
労働者の賃金
資本家の消費
生産手段の補填
に分かれる。
トラシは:
👉 これをすべて「所得」とみなす
しかし:
固定資本・原材料は消費ではなく再投入
③ 社会的再生産の条件を無視
社会全体では:
👉 第Ⅰ部門と第Ⅱ部門の交換比率が成立しなければ再生産不能
トラシは:
👉 個々の市場交換の集合としてしか見ない
◆ マルクスの結論
トラシの理論では:
👉 社会的再生産の物質的条件が説明できない
なぜなら:
資本の循環
部門間の比例
生産手段の再生産
が考慮されていないから。
◆ 両節の関係
この2つは実は密接に関連します。
第12節
👉 再生産に必要な貨幣の供給問題
第13節
👉 再生産を「単なる消費」と見る理論への批判
共通テーマ:
社会的再生産は単純な市場均衡ではない
◆ 一言でまとめると
第12節
👉 貨幣もまた社会内部で生産される商品であり、再生産の一部
第13節
👉 再生産を「所得の消費」とだけ考える理論は誤り
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