マルクス『資本論』第2巻
第3篇「社会的総資本の再生産と流通」第19章
「研究の対象に関する従来の所説」
第1節 重農学派/第2節 アダム・スミス
③ 不変資本部分
④ アダム・スミスにおける資本と収入
の要点解説です。
(※難所として有名なので、できるだけ構造的に説明します。)
■ 第19章の全体テーマ
マルクスの目的:
社会全体の再生産(=経済が毎年どう回るか)を正しく理解するため、
先行学説の誤りを批判する
とくに重要なのは:
👉 社会の総生産物はどのように分解されるか
👉 資本と収入はどう区別されるか
第1節 重農学派(ケネーなど)
■ 基本思想
重農学派は:
「農業だけが純生産(剰余)を生む」
と考えた。
理由:
自然が生産力を与える
工業は加工するだけ
商業は移転するだけ
■ 経済循環の発見(重要な功績)
ケネーの「経済表(Tableau Économique)」は:
👉 社会全体の循環を初めて描いた
主要な三階級:
生産階級(農民)
地主階級
不生産階級(工業・商業)
■ マルクスの評価
✔ 循環という視点は画期的
✔ 社会的再生産の先駆
しかし:
✖ 工業を「不生産」とした
✖ 剰余の源泉を自然に求めた
マルクスは:
剰余価値は労働から生まれる
とする。
第2節 アダム・スミス
スミスは重農学派より進歩しているが、
マルクスは重大な理論的誤りを指摘する。
③ 不変資本部分
ここが非常に重要。
■ マルクスの区分(前提)
生産物の価値は:
C + V + S
C = 不変資本(原料・機械など)
V = 可変資本(賃金)
S = 剰余価値
■ 不変資本とは?
👉 生産物に価値を「移転するだけ」
例:
鉄
綿花
機械の減価
エネルギー
これらは新しい価値を生まない。
■ スミスの誤り(マルクスの批判)
スミスは社会の総生産物を
収入(賃金+利潤+地代)に還元した
つまり:
👉 C(不変資本)を独立した部分として扱わない
■ なぜ誤りか?
機械や原料は:
誰かの収入ではない
しかし必ず再生産されねばならない
例:
鉄工場の生産物の一部は:
👉 次の生産のための鉄になる
👉 誰の消費にもならない
■ マルクスの指摘
もし全部が収入なら:
👉 生産手段はどこから来るのか?
社会は翌年生産できなくなる。
■ 要するに
スミスは:
社会の総生産物の中の
「生産手段として再投入される部分」
を見落とした
④ アダム・スミスにおける資本と収入
■ スミスの区別
スミスは一応:
資本 = 生産に用いられるもの
収入 = 消費されるもの
と区別した。
■ しかし社会全体では崩れる
個人の視点では:
工場主にとって賃金は資本
労働者にとって賃金は収入
👉 同じ貨幣が立場によって変わる
■ スミスの混乱
スミスは社会全体を見たとき、
総生産物 = 収入
としてしまう。
つまり:
👉 社会のすべてが消費されるかのように扱う
■ マルクスの批判の核心
社会的再生産では:
👉 生産手段は消費されず再投入される
👉 それは収入ではない
■ マルクスの結論
社会の総生産物は:
【二つの用途に分かれる】
① 生産手段として再投入される部分(C)
② 個人的消費に回る部分(V + S)
■ なぜ重要か?
これが:
👉 第20章以降の再生産図式(部門Ⅰ・Ⅱ)
👉 資本主義の循環分析
の基礎になる。
■ 一言でまとめると
重農学派
→ 社会循環を発見したが農業偏重
スミス
→ 労働価値論を発展させたが
→ 不変資本を収入に還元する重大な誤り
マルクス
→ 社会的再生産には
👉 生産手段の再生産が不可欠
👉 それは収入ではない
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