資本論(第2巻・第3篇「社会的総資本の再生産と流通」第21章「蓄積と拡大再生産」第1節)
における第Ⅰ部類(生産手段部門)での蓄積について、
ご指定の ①貨幣退蔵 ②追加不変資本 ③追加可変資本 を、できるだけ体系的に解説します。
◆前提:第Ⅰ部類とは何か
マルクスは社会全体の生産を二つの部門に分けます。
第Ⅰ部類:生産手段(機械・原料など)を生産
第Ⅱ部類:消費手段(生活資料)を生産
第Ⅰ部類が拡大すると、社会全体の生産能力が拡張します。
したがって蓄積論では第Ⅰ部類が核心になります。
◆蓄積(拡大再生産)とは
単純再生産:
→ 利潤(剰余価値)を全部消費
拡大再生産(蓄積):
→ 剰余価値の一部を資本に再転化する
つまり:
利潤 → 新しい資本
① 貨幣退蔵(貨幣の蓄積)
●意味
蓄積はすぐに実物資本にならない。
まず貨幣として貯められる。
これを 貨幣退蔵(hoarding) という。
●なぜ必要か
新しい工場・機械・原料・労働者を導入するには:
ある程度まとまった資金
投資可能なタイミング
市場条件
が必要。
したがって:
剰余価値 → いったん貨幣として蓄積 → 投資
●マルクスの重要な洞察
社会全体では:
誰かが貨幣を貯めると、他の誰かは貨幣不足になる
つまり貨幣退蔵は流通を変化させる。
●第Ⅰ部類での意味
第Ⅰ部類が貨幣を貯めると:
将来の設備投資の準備
生産能力の拡大の前段階
② 追加不変資本(c)
●不変資本とは
不変資本=生産手段
機械
原料
工場設備
エネルギーなど
価値を新たに生まない
→ 既存価値を製品に移転するだけ
●追加不変資本とは
蓄積の結果、新たに導入される生産手段。
例:
新しい機械の購入
工場の増設
原材料の増加
●第Ⅰ部類の特殊性
第Ⅰ部類は生産手段を生産するので:
自分の生産物がそのまま資本になる
つまり:
第Ⅰ部類の拡大は自己増殖的
社会全体の生産力を押し上げる
●重要な点
蓄積は通常:
c(不変資本)の増加が主
なぜなら:
技術進歩
大規模生産
機械化
③ 追加可変資本(v)
●可変資本とは
可変資本=労働力への支出(賃金)
唯一、剰余価値を生む資本。
●追加可変資本とは
新しい労働者の雇用。
新規採用
労働時間増加
賃金支出の増大
●なぜ「可変」なのか
労働は価値を増殖させる。
賃金以上の価値を生む
→ 剰余価値
◆三者の関係:蓄積の実態
拡大再生産は:
剰余価値 → 新たな c と v に分割
つまり:
m → Δc + Δv
●第Ⅰ部類の場合
新しい機械を作る → それを自分で使う
→ 追加不変資本
同時に:
それを操作する労働者が必要
→ 追加可変資本
◆なぜ貨幣退蔵が先に来るのか
マルクスの論理は非常に厳密です。
剰余価値はまず貨幣として実現される
すぐには資本に転化できない
投資条件が整うまで貨幣として保持
その後、c と v に分割される
◆まとめ(最重要ポイント)
第Ⅰ部類における蓄積の過程:
① 剰余価値の貨幣形態 → 貨幣退蔵
↓
② 生産手段の増加 → 追加不変資本
↓
③ 労働力の増加 → 追加可変資本
◆マルクスの理論的核心
この章が示す最大のポイント:
✔ 資本主義の成長は「自動」ではない
拡大再生産には:
貨幣
投資
部門間の均衡
労働力供給
が必要。
✔ 生産手段部門が成長の鍵
第Ⅰ部類が拡大しなければ
社会全体は拡大できない。
✔ 蓄積は社会的関係
単なる「貯金」ではなく:
部門間交換
労働市場
価値関係
の再編成を伴う。
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